Research Abstract |
純電気ブレーキはその第一段階としての,電動車の電気ブレーキを停止まで用いることについては,最初の新京成電鉄に続いて小田急電鉄が新形式車に本格的に採用したのをきっかけに東急,名鉄,JR東日本など,採用に踏み切る鉄道が急速に増えている。しかし,このことは本研究がねらっていることが既に不要になって,実用化が進んでいる訳ではなく,現状は全て狭義の「純電気ブレーキ」である,通常の運転に摩擦ブレーキを使わないものではなく,広義の純電気ブレーキの一種である,停止まで電動車の電気ブレーキを使う方式であって,今後の本格的な「純電気ブレーキ」化にむけて,本研究の重要性が一層増して来たことを意味している。 本格的な純電気ブレーキの実用化に際しては,高速域でのブレーキ力の低下を前提としたブレーキ制御方法を確立すると共に,ブレーキ中に発生する可能性のある滑走に対する対策の確立が必要である。 このことに関連して確率変数である粘着現象をモデル化して滑走を再現できるシミュレーションを行って,滑走の発生位置・速度とその結果発生する過走距離との関係を求めて,以下の重要な知見を得た。つまり,停止点から遠い位置で高速時での滑走は,大きな過走につながる可能性もあるものの,停止までの範囲の制御で補償できる可能性が高く,逆に停止間際の滑走では過走距離自体も短いために,影響は少なく,通常のブレーキパラメータでは10〜20km/h程度での滑走が厳しいことが判った。このことから過走に関して安全性の高いブレーキパターンと,滑走発生後の制御方法に関しての重要な知見を得た。 一方,パルス数の少ない現行のエンコーダと,精度の高いエンコーダを用いた定点停止の比較を,純電気ブレーキ用のインバータの制御方式との関係で行った実験からその停止精度,信頼性を検証した。その結果、精度の高いエンコーダとベクトル制御のインバータとを用いることにより,停止精度は平坦部,勾配部(60%)においても,±5cm以内(平均は±5mm以内)に収まっていることが確認された。また,信頼性についても,各種試験(振動,熱,衝撃,電磁波等)を実施した結果,所定の性能が得られたことより,実使用にも耐えうると結論づけられた。 重要部分の発表を11項に示すように進めている。
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