2001 Fiscal Year Annual Research Report
ナノグラニュラー軟磁性薄膜の大きな磁場中異方性の機構解明並びに応用に関する研究
Project/Area Number |
13555099
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Research Institution | Research Institute for Electric and Magnetic Materials |
Principal Investigator |
大沼 繁弘 (財)電気磁気材料研究所, 薄膜材料グループ, 主任研究員 (50142633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 正人 物質・材料研究機構, 主任研究員
三谷 誠司 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (20250813)
小林 伸聖 (財)電気磁気材料研究所, 薄膜材料グループ, 研究員 (70205475)
藤森 啓安 (財)電気磁気材料研究所, 研究統括, 理事 (60005866)
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Keywords | 一軸磁気異方性 / ナノグラニュラー構造 / 軟磁性 / 磁場中誘導磁気異方性 / 高周波特性 / Co基合金 |
Research Abstract |
1、研究目的 我々が見出したCo基ナノグラニュラー軟磁性膜は木きな異方性磁界を有し、優れた高周波軟磁気特性を示すため、次世代の電子デバイスや磁気デバイスの磁心材料として期待されている。しかし、その大きな異方性磁界の起源は従来の理論では説明できない。本研究の目的は、Co基ナノグラニュラー軟磁性膜の大きなHkの起源を明らかにし、さらなる優れた高周波軟磁気特性を示す磁性膜を得るための指針を見出すことである。 2、研究結果および考察 160 Oeの大きな異方性磁界(Hk)を示すナノグラニュラーCo-Zr-O膜の組成、構造そして特性の関係を検討した。電顕観察の結果、Co-Zr-O膜の構遭は従来のCo-Al-O軟磁性膜のそれと異なり、膜中のCo粒子密度が低く、マトリックスが強磁性体のCo-Zr-0(低Co濃度)から構成されていることが分かった。そのため、大きな磁化や異方性は粒子とマトリックスとの相互作用に起因していることが考えられる。 この結果を確かめるために、最も大きなHkを示す可能性が高いCo-pd-Si-O系ナノグラニュラー軟磁性膜を合成し、組成、構造と特性との関係を検討した。今回、この系の膜においてHk=400 Oeを示す軟磁性膜や、ρ=10^5μΩcmを示す軟磁性膜を見出すことが出来た。大きなHkを示す膜の透磁率の周波数依存性(μ-f特性)は優れており、測定限界の3GHzでも、自然共鳴点(fr)がまだ観察されない膜を得ることが出来た。この膜のfrの計算結果は5GHzであった。fr=5GHzの軟磁性材料はフェライトの他に無く、次世代携帯電話等に用いるインダクタの磁心材料や、1〜10GHz帯域での電磁波吸収膜としての可能性が高い。いずれの組成の膜のμ-f特性も熱処理を施すと向上し、特に、ρ=10^5μΩcmを示す軟磁性膜のHkは、熱処理温度とともに大きくなる。電顕観察の結果はCo-Zr-O系膜と同様に、CoPd粒子が強磁性co-Pd-Si-Oマトリックス中に分散している形態になっており、CoPd粒子の大きな結晶磁気異方性が大きな異方性磁界の起源になっている可能性が高い。 Co基ナノグラニュラー軟磁性膜の大きなHkの起源を明らかにするために、高感度磁気異方性トルク計で熱処理無しの試料の磁気異方性エネルギーの大きさを評価し始めた。2kG以上の磁場で測定すると、一軸磁気異方性しか現れないが、それ以下の低磁場で測定すると、4次、6次の項もかなり現れ、磁区のレベルではそれほど揃っていないことが推察される。今後、熱処理した試料や、広範囲な組成の膜を測定し、組成と磁気異方性エネルギーの大きさと関係を明らかにし、大きな異方性磁界の原因を明らかにしたい。そのためには、磁化の温度変化と磁気異方性の温度変化を比較する必要があり。これらを次年度に検討し、その起源を明らかにしたい。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Ohnuma, H.J.Lee, N.Kobayashi, H.Fujimori, T.Masumoto: "Co-Zr-O Nano-granular Thin Films with Improved High Frequency Soft Magnetic Properties"IEEE Trans.Mag.,. Vol.37. 2251-2254 (2001)
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[Publications] 大沼繁弘, 小林伸聖, 李希宰, 藤森啓安, 増本健: "ナノグラニュラー(Co._<92>Fe._<08>)-Al-O/SiO2多層膜の軟磁気特性"日本応用磁気学会誌. 25. 691-694 (2001)
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[Publications] 大沼繁弘: "ナノグラニユラー磁性薄膜とその応用"応用磁気学会・応用磁気セミナテキスト. 41-53 (2001)
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[Publications] N.Kobayashi, S.Ohnuma, T.Masumoto, H.Fujimori: "(Fe-Co)-(Mg-fuoride) Insulating Nanogranular System with Enhanced Tunnlel-type Giant Magnetoresistance"J.Appi.Phys.,. 90. 4159-4162 (2001)
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[Publications] 小林伸聖, 大沼繁弘, 増本健, 藤森啓安: "金属-フッ化物ナノグラニュラー膜のトンネル磁気抵抗効果とGIG化による磁界感度の改善"日本応用磁気学会誌. 25. 691-694 (2001)
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[Publications] S.Mitani, T.Moriyama, K.Takanashi: "Structure and tunnel magnetoresistance in Fe/MgF_2/Co junctions witj an oxide seed layer on an Fe bottom electrode"J.Appi.Phys.. 91(In press). (2002)