2003 Fiscal Year Annual Research Report
ナノグラニュラー軟磁性薄膜の大きな磁場中誘導磁気異方性の機構解明並びに応用に関する研究
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13555099
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Research Institution | The Research Institute for Electric and Magnetic Materials |
Principal Investigator |
大沼 繁弘 財団法人電気磁気材料研究所, 薄膜材料グループ, 主任研究員 (50142633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 正人 財団法人電気磁気材料研究所, 物質・材料研究機構, 主任研究員 (90354208)
三谷 誠司 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (20250813)
小林 伸聖 財団法人電気磁気材料研究所, 薄膜材料グループ, 研究員 (70205475)
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Keywords | ナノグラニュラー構造 / 誘導磁気異方性 / 形状磁気異方性 / 高周波軟磁気特性 / 高い自然共鳴点 / 一軸磁気異方性 / GHz磁気デバイス / 薄膜 |
Research Abstract |
(大きなHkの機構解明) 最も大きなHkを示すCo-Si-Pd-O系ナノグラニュラー軟磁性膜を、X線小角散乱法や高分解能(HR)TEMでその構造を観察し、Hkとの関係を検討した。軟磁性Co-Si-Pd-O膜には、従来の軟磁性グラニュラー膜に見られる粒子同士の接触が観察されず、むしろ、GMR膜(超常磁性膜)のような構造を示す。すなわち、膜中の粒子はナノサイズで、粒子同士はほとんど孤立しており、軟磁性の原因とされる粒子間の磁気的相互作用が存在しないように見える。しかし、ナノビームEDS分析の結果、かなりのCoが粒界にも入っていることがわかり、軟磁性は粒界を介した粒子間の交換結合により発現しているものと考えられる。HRTEMで膜を観察しても粒子の形態にはほとんど変化が見られないが、X線小角散乱法でマクロに観察すると、粒子同士が一方向に揺らぎながら並んでいるようなスペクトルが得られる。すなわち、大きな異方性磁界(Hk)は緩く揃っている粒子群の形状磁気異方性に起因していることが示唆される。この仮説を明らかにするために、10Tまでの強磁場中で熱処理を行い、Hkもしくは一軸磁気異方性(Ku)の変化を観察した。その結果、磁場の増加と共にHkが大きくなることを見出した。一例として、軟磁性と超常磁性とが混在しているCo-Si-Pd-Oを10T作用下200℃で熱処理したところKuの値は成膜状態のほぼ3倍になることが判った。このことから、膜中の子の形態が変化し、それに伴って粒子群の形状磁気異方性が増加するものと考える仮説が実証された。 (応用) 高周波電磁波ノイズ抑制膜:軟磁性材料の高周波特性を決定するのが、渦電流損失と強磁性共鳴点である。渦電流損失を小さく、強磁性共鳴点を高くするためには、材料の電気比抵抗、飽和磁化、Hkを大きくする必要がある。3つのパラメータが大きいナノグラニュラー軟磁性膜はGIIz帯域で優れたノイズ抑制効果を示すことを昨年まで報告してきた。今年度は抑制効果の原因が磁気共鳴損失に起因することを明らかにすると共に、その大きさの定量的実験を行なった。その結果、確かに磁気共鳴損失がその周波数で大きな抑制効果に変わることを見出すと共に、それより高い周波数帯域にも大きな抑制効果が存在することを見出した。 高飽和磁化軟磁性膜:Co基ナノグラニュラー軟磁性膜は大きなHkを持つが、CoをFeCoにしたナノグラニュラー膜でも同様の結果が得られる。膜中の粒界物質を少なくすると、大きなBs(〜2.4T)を有する軟磁性膜が突現する。今回、従来のAl等の変わりにMnを用いて成膜した。Mnは約10at.%まで添加してもFeCoのBsは減少しない。そればかりか、FeCo-Mn膜のHcはデバイス作製プロセス温度の熱処理で5Oe以下まで減少し、高周波特性の優れた膜が得られた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] S.Ohnuma, H.Fujimori, M.Ohnuma, K.Hono, T.Masumoto: "Extraordinary Large Induced Magnetic Anisotropy in Metal/Insulator Nano-gramar Thin Films"IEEE Transaction on Magnetics. (in press).
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[Publications] Z.Liu, D.Shindo, S.Ohnuma, H.Fujimori: "Nano-granular Co-Zr-O magnetic films studied by HRTEM and electron holography"J.of Mag.Mag.Mater.. 262. 308-315 (2003)
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[Publications] Ki Hyeon Kim, M.Yamagnuchi, K.J.Arai, H.Nagura, S.Ohnuma: "Effect of radio-frequency noise suppression on the coplanar transmission line using soft magnetic thin films"JAP. 93. 8002-8005 (2003)
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[Publications] M.Ohnuma, K.Hono, Y.Yanai, H.Fukunaga, Y.Yoshizawa: "Direct evidence for structural origin of stress-induced magnetic anisotropy in Fe-Si-B-Nb-Cu nanocrystalline alloys"Applied Physics Letters. 83. 2859-2861 (2003)
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[Publications] M.Ohnuma, D.H.Ping, T, Abe, H.Onodera, K, Hono, V.Yoshizawa: "Optimization of the microstructure and properties of Co-substituted Fe-Si-B-Nb-Cu nanocrystalline soft magnetic alloys"J.Appl.Phys.. 93. 9186-9194 (2003)
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[Publications] N.Tanaka, J.Yamasaki, S.Mitani, K.Takanashi: "High-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy and electron energy loss spectroscopy of nano-granular Co-Al-O alloys"Scripta Materialia. 48. 909-914 (2003)
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[Publications] 大沼繁弘: "「ナノメタルの最新技術と応用開発」ナノグラニュラー膜の軟磁性"(株)シーエムシー出版. 4 (2003)