2003 Fiscal Year Annual Research Report
感染トリガープロテアーゼとプロテアーゼ受容体を軸にしたインフルエンザの新治療法
Project/Area Number |
13557014
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木戸 博 徳島大学, 分子酵素学研究センター, 教授 (50144978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 真人 国立感染症研究所, 部長 (90111343)
山田 博司 徳島大学, 分子酵素学研究センター, 助手 (30343304)
奥村 裕司 徳島大学, 分子酵素学研究センター, 助手 (70294725)
大内 正信 川崎医科大学, 部生物学, 教授 (80107185)
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Keywords | インフルエンザウイルス / プロテアーゼ / 感染トリガープロテアーゼ / インフルエンザ脳炎・脳症 / 肺炎 / ミニプラスミン / 血液脳関門 / 浮腫 |
Research Abstract |
インフルエンザの治療薬として、ウイルスが感染細胞から出芽する際に働くウイルス膜上のノイラミニダーゼに対する阻害剤が開発され、近年良く使用されるに至っている。しかしウイルスに由来するノイラミニダーゼは変異し易く、薬剤耐性株の出現がすでに問題となっている。これに対して本研究で遂行する研究は、ウイルスの細胞内侵入時に必須な、宿主側の感染トリガープロテアーゼを標的にした治療法の開発研究が行われた。この場合、プロテアーゼ側は変異することなくウイルスは感染トリガープロテアーゼによって認識される株のみが感染、増殖可能となる。さらに感染トリガープロテアーゼの本来の作用部位と推定されるプロテアーゼ受容体、さらにプロテアーゼ受容体を介する気道分泌の制御が検討された。これらの中で、特に従来不明であった鼻腔、上咽頭部のインフルエンザウイルス感染トリガープロテアーゼの候補として膜結合型のTMPRSS7を見出し、この酵素が、運動の盛んな繊毛上皮細胞にのみに分布して繊毛運動の無い細胞には認められない事、さらにこのリコンビナント蛋白質の発現に成功した。これまでの研究と本研究から、気道にはそれぞれ局在の異なる少なくとも4種の感染トリガープロテアーゼが存在して、それぞれが個々のウイルス株と異なった親和性を示す事を見出した。さらにウイルス感染がきっかけとなって肺の異所性トリプシンと、基底膜の分解に関与するMatrix metalloprotease-9(MMP-9)が著明に増加して、肺炎増悪に関与する事、肺の炎症の結果産生されたMini-plasminが脳の血管内皮細胞に蓄積して、血液脳関門を障害し、脳浮腫を引き起こしインフルエンザ脳症の発症機序に大きく関与する事が明らかにされた、これら標的酵素群に対する阻害剤のスクリーニングが行われ、インフルエンザ感染モデル動物実験による阻害剤の有効性の検定が現在進行しており、インフルエンザの新治療法として大いにその成果が期待される。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Satou, M: "A novel enzyme from porcine lungs processing of hemagglutinin of influenza A viruses : Purification and characterization"Biol.Chem.. 384(2). 219-227 (2003)
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[Publications] Yao, D.: "Pathologic mechanisms of influenza encephalitis with an abnormal expression of inflammatory cytokines and accumulation of mini-plasmin"J.Med.Invest.. 50(1,2). 1-8 (2003)
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[Publications] Hara, K.: "Inhibition of the protease activity of influenza virus RNA polymerase PA subunit by viral matrix protein"Microbiol.Immunol.. 47(7). 521-526 (2003)
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[Publications] Okumura, Y.: "Cloning and characterization of a novel transmembrane-type serine protease from rat kidney, a new member among the sodium channel activators"Biol.Chem.. 384. 1483-1495 (2003)
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[Publications] Yao, D.: "Accumulation of mini-plasmin in the cerebral capillaries causes a vascular invasion of the murine brain by a pneumotropic influenza A virus : implication for influenza associated encephalopathy"Biol.Chem.. (In press). (2004)
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[Publications] 木戸 博: "肺サーファクタントはインフルエンザ感染に対する重要な生体防御物質の一つである。肺サーファクタントの作用とその分泌促進剤"J.Jpn.Med.Soc.Biol.Interface. 34(1,2). 8-10 (2003)
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[Publications] 木戸 博: "インフルエンザウイルスの感染感受性をきめる個体のプロテアーゼ群とインフルエンザ脳症の発症機序"日本薬理学雑誌. 122(1). 45-53 (2003)
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[Publications] 木戸 博: "抗インフルエンザ作用を示す去痰剤の不思議、新たな薬理作用と機序"アレルギー科. 16(3). 232-239 (2003)
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[Publications] 木戸 博: "インフルエンザ脳症の発症機序"神経内科. 60(2). 119-127 (2003)