2003 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞を用いた心筋細胞分化機序の解析と再生医療への応用
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13557060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 同文 東京大学, 医学部附属病院, 寄付講座教員(常勤形態) (80313104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 良三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60207975)
山崎 力 東京大学, 医学部附属病院, 寄付講座教員(常勤形態) (60251245)
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Keywords | ES細胞 / HMGA2 / P19CL6細胞 / 心筋細胞分化 / BMP / Csx / Nkx2-5 / 再生医療 / 分子生物学 |
Research Abstract |
我々の研究目的は、マウスES細胞などの幹細胞に対して細胞増殖因子や心筋転写因子を作用させ、高率に心筋細胞分化を誘導する手法を確立することである。そこで心臓の発生に必須であるホメオボックス型心筋転写因子Csx/Nkx2-5や発生段階で重要な転写共役因子であるHMGA2に着目し、以下の研究を行った。 ヒト心筋特異的転写因子CSX/NKX2-5の変異体は、心房中隔欠損症などの先天性心疾患の原因となることが示されたが、我々は、いくつかの変異体をそれぞれ過剰発現するP19CL6細胞の細胞株を単離し、解析した。P19CL6細胞はDMSO処理により高率に心筋細胞へと分化する心筋分化のモデルであるが、CSX/NKX2-5の変異体を発現する細胞株においては心筋遺伝子の発現は低下しており、心筋細胞分化も抑制されることが示された。また特にひとつの変異体を過剰発現する細胞においては、ストレスに対する細胞死が亢進していた。これらの結果から我々は、Csx/Nkx2-5は正常な心筋分化に必須であり、CSX/NKX2-5の変異体の一部は発生段階において細胞死を誘導することで心奇形をもたらす可能性があることを示した(Biochem Biophys Res Commun 298 : 493-500, 2002)。 また、P19CL6細胞においてDMSO処理により発現が上昇する因子の一つとして、転写共役因子であるHMGA2をdifferential display法を用いて見いだした。我々は、この因子がBMPのシグナル伝達因子であるSmadと会合し、協調的にCsx/Nkx2-5の転写を活性化すること、またこのBMP-Smad Csx/Nkx2-5のカスケードを通じて心筋細胞分化を促進することを発見した(論文投稿中)。 さらに我々は、ES細胞にBMPやActivinなどの細胞増殖因子を添加して胚様体を形成させると、その心筋細胞への分化能が亢進することを見いだし(論文準備中)、今後細胞増殖因子を利用したES細胞の心筋分化の効率化を進めていく計画である。
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