Research Abstract |
我々は平成13年度に自己幹細胞(MSC)の坦体として自己血小板濃縮血漿(PRP)が有用であることをin vitroにおいて確認し,さらに平成14年度において,イヌ顎骨の骨欠損にMSCを応用することにより骨再生を促進させ得ることを実証し,患者への臨床応用に向う基礎データを収集することを目的として,以下の研究を実施した。 ビーグル成犬5頭の下顎両側小臼歯を抜歯,同時に腸骨および抜歯窩より骨髄液を採取し,MSCの培養を行った。3カ月後,同部に片側3ヶ所の円柱状(直径3.75mm,深さ7mmの人工的骨欠損を作り,PRPを坦体としてMSCを3種類の細胞密度すなわち,L(2x10^5cell/μl),M(2x10^6cell/μl),H(2x10^7cell/μl)で移植した。また,PRPのみと乏血小板血漿(PPP),および血餅のみで骨欠損を満たしたものをコントロールとした。動物を2週間後に屠殺,脱灰標本を作成し,病理組織学的に再生骨組織を観察した。また,組織形態計測を行い再生骨量を定量的に検討した。その結果,骨欠損形成後2週間において,3種のMSC移植群では,PRPのみの移植群に比べ,欠損中央部における骨再生が遅延していたが,血餅のみのコントロールと比較して明らかに骨再生は亢進していた。また,骨欠損内部の再生骨面積率は,細胞密度L, M, Hでそれぞれ22.57±9.77%,15.39±5.93%,21.44±7.95%であり,血餅群,PRP群,PPP群でそれぞれ,16.13±7.38%,28.16±8.55%,20.05±5.61%であった。MSC移植群では3種類の細胞密度に有意差はみられなかったが,PRP群は血餅群と比較して有意に高かった。 以上の結果から,MSCを骨欠損内部に移植した場合,術後2週間という初期の段階において骨形成にはポジティブな効果を示さないことが明らかになり,今後培養自己幹細胞を骨再生に応用するうえでの有用な知見を集積することができた。
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