2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13571020
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 好信 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (60203808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯島 みどり 立教大学, 法学部, 助教授 (20252124)
池田 光穂 熊本大学, 文学部, 教授 (40211718)
孤崎 知己 専修大学, 経済学部, 教授 (70234747)
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Keywords | 先住民運動 / 民主化 / グアテマラ共和国 / 多文化主義 / 政治的自立 / メキシコ / ボリビア / 和解 |
Research Abstract |
本年度は、グアテマラ、ニカラグア、メキシコ、ならびにボリビアにおける国家と先住民社会との関係が、それぞれどのように変貌をとげているのか、具体的に実地調査をとおして明らかにした。その結果、(1)グアテマラ(太田、池田、狐崎、飯島)では、大統領選挙を迎え、和平合意に銘記されていた先住民に対する補償が政治利用されていること、ならびに政治としての先住民運動が文化的-とくに宗教儀礼など-要因により正当化され始めていることを、それぞれの調査から明らかにした。ニカラグア(飯島)では、法令445号が大西洋岸の先住民に与える影響を調査した。メキシコ(飯島)のサパティスタ運動は、政府との交渉が頓挫し、これまで以上に「政治的自立」が彼らの主張の大きな部分を占めるようになったことが判明した。ボリビア(狐崎)では、政府の対外政策に敵対する先住民運動がボリビア・ナショナリズムとして政治的に回収される局面が浮上している。 本年度の調査では、これらの4か国における先住民運動の展開を比較検討したが、それぞれの国内事情による影響のため差異はあるものの、共通点も発見できた。それは、グアテマラにその典型例を見て取れるが、人権や内戦被害の補償という政治的主張が文化により正当化される傾向がより顕著に見られることである。つまり、普遍的言説に流通する「語り」だけではなく、それとは相容れないとされた「文化による語り」が共存することである。文化は政治的活動が制限されたときに現れる代理ではなく、むしろ政治的主張に正当性を与え、その政治的主張を牽引する未来への展望を示すのである。文化は政治とは排他的に位置づけられて語られるべきものではない。今後の課題は、文化による政治という分析視点ではなく、文化と政治が相互に連結した形態が先住民運動を特徴づけている、という研究仮説を、ラテンアメリカだけではなく、他の地域においても検証することである。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Ota, Yoshinobu: "Entre descolonization y globalizacion : Una reflexion desde Japon sobre la cogunactura actual en Guatemala"Politicas de Identidades y Differrecias Sociales. 97-116 (2003)
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[Publications] 狐崎知己: "貧困と人間の安全保障"ボリビア国別援助研究会報告書. 国際協力機構(予定). (2004)
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[Publications] 狐崎知己: "マヤ民族へのジェノサイド"ジェノサイドの社会史. ミネルヴァ書房(予定). (2004)
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[Publications] 池田光穂: "コスモポリタン再考-医術と統治術のはざまで"経済学雑誌. 104巻2号. 22-36 (2003)
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[Publications] 池田光穂: "帝国医療の予感"九州人類学会報. 30. 119-122 (2003)
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[Publications] 飯島みどり: "中米/三つのの内戦、三つの『和解』"アジ研ワールド・トレンド. 82. 4-7 (2003)
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[Publications] 太田好信: "人類学と脱植民地化"岩波書店. 272 (2003)