2003 Fiscal Year Annual Research Report
北メソポタミア平原における初期農耕村落の発生と展開に関する考古学的研究
Project/Area Number |
13571035
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西秋 良宏 東京大学, 総合研究博物館, 助教授 (70256197)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 助手 (10272527)
小口 高 東京大学, 空間情報科学センター, 助教授 (80221852)
|
Keywords | 国際研究者交流 / シリア / 新石器時代 / 農耕牧畜の起源 / メソポタミア / 先史土器 / 打製石器 / 石膏 |
Research Abstract |
シリア東北部ハブール平原は、北メソポタミアの西の一角を占める。ここにあるテル・セクル・アル・アヘイマル遺跡の第4次発掘、地理学的調査、民族誌調査、ならびに採集標本の解析、年代測定などをおこなった。研究の概要および得られた新知見につき記す。 (1)当遺跡の最古の居住が先土器新石器時代B期半ばまでさかのぼるという所見を得た。従来シリア領北メソポタミアでは先土器新石器時代B期末の遺跡が最古とされていたから、今回の調査結果は通史を書き換えるものとなった。 (2)農耕牧畜技術が完成されたのは一般に先土器新石器時代B期後半とされる。この技術をもって以降、人類は資源環境の単調な北メソポタミアのような平原地帯の開発ができるようになったというのが通説である。今回、それより古い集落が発見されたことで、最古の住人たちの生業経済についてさらに追求する必要が生じた。そのため遺跡土壌を極小フルイで水洗し大量の植物・動物化石を採集した。 (3)遺跡からは大量の人造石膏が出土した。新石器時代住人が製造、使用したものである。使用は建築や容器・宗教作品制作など他面におよんでいる。その技術や利用したコンテキストを調べるために、現在なお伝統技術をもって石膏を自作している周辺村落をたずね、民族誌的情報を得た。 (4)今回の発掘で遺跡最下部から旧ハブール川の河床が見つかった。これは、河川活動と新石器時代住人の占地活動との関係を調べるてがかりとなる。この点をさらに明確にするため集落周辺の地理学的調査をおこない、地形形成年代決定用のOSL試料を大量に採集した。 (5)新石器時代各期にまたがる放射性炭素年代測定試料を20点近く得た。現在、AMS法を用いて解析中である。
|
Research Products
(14 results)
-
[Publications] Nishiaki, Y.: "The third season at Tell Seker al-Aheimar, the Upper Khabur, Syria (2002)"Orient Express-Notes et Nouvelles d'Archeologie Orientale. 2003(2). 43-45 (2003)
-
[Publications] Connan, J, Nishiaki, Y.: "The bituminous mixtures of Tell Kosak Shamali on the Upper Euphrates (Syria) from the Early Ubaid to the Post Ubaid : composition of mixtures and origin of bitumen."Tell Kosak Shamali - The Archaeological Investigations on the Upper Euphrates, Syria. Volume II : Chalcolithic Technology and Subsistence. UMUT Monograph 2. 283-306 (2003)
-
[Publications] Nishiaki, Y.: "Chronological developments of the Chalcolithic flaked stone industries at Tell Kosak Shamali."Tell Kosak Shamali - The Archaeological Investigations on the Upper Euphrates, Syria. Volume II : Chalcolithic Technology and Subsistence. UMUT Monograph 2. 15-111 (2003)
-
[Publications] Nishiaki, Y.: "Functional and morphological observations on the Chalcolithic grinding stones from Tell Kosak Shamali."Tell Kosak Shamali - The Archaeological Investigations on the Upper Euphrates, Syria. Volume II : Chalcolithic Technology and Subsistence. UMUT Monograph 2. 121-183 (2003)
-
[Publications] Nishiaki, Y.: "Summary of the papers in Volume II."Tell Kosak Shamali - The Archaeological Investigations on the Upper Euphrates, Syria. Volume II : Chalcolithic Technology and Subsistence. UMUT Monograph 2. 307-311 (2003)
-
[Publications] 西秋良宏: "考古美術(西アジア)部門所蔵考古学資料目録:第6部イラン、マルヴ・ダシュト平原の先史文化"東京大学総合研究博物館標本資料報告. 第51号. (2003)
-
[Publications] 西秋良宏: "北メソポタミア農耕村落の起源-テル・セクル・アル・アヘイマル遺跡の三次調査(2002年)"『今よみがえる古代オリエント-第10回西アジア発掘調査報告会』日本西アジア考古学会編. 27-30 (2003)
-
[Publications] 西秋良宏: "前・中期旧石器時代の技術形態学"『前中期旧石器問題の検証』日本考古学協会編. 503-518 (2003)
-
[Publications] 西秋良宏: "論説空間:歴史への無知が被害生む-中東の文化遺産保護"東京大学学生新聞. 4月15日. (2003)
-
[Publications] 西秋良宏: "21世紀を読む:歴史遺産守る本当の力-イラクの文化財"毎日新聞. 6月8日. (2003)
-
[Publications] 西秋良宏: "イランのこぶウシ"文部科学教育通信. 89. 43-43 (2003)
-
[Publications] 小口 高, 堀 和明, 小口千明, 西秋良宏: "北東シリア,ハブール川沿いの段丘と堆積物(第1報)"地形. 24(3). 335-336 (2003)
-
[Publications] 小口千明, 小口 高, 堀 和明, 西秋良宏: "北東シリア,ハブール川沿いで見られる塩類沈着に伴うノジュール形成について"地形. 24(3). 330-330 (2003)
-
[Publications] Nishiaki, Y., T.Matsutani (eds.): "Tell Kosak Shamali - The Archaeological Investigations on the Upper Euphrates, Syria. Volume II : Chalcolithic Technology and Subsistence"The University Museum, The University of Tokyo. 318 (2003)