2002 Fiscal Year Annual Research Report
終末期医療と葬送に対する意思の表明に関する国際比較研究
Project/Area Number |
13572003
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
北川 慶子 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (00128977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 淳 佐賀大学, 文化教育学部, 助教授 (40215067)
武田 淳 佐賀大学, 農学部, 教授 (20045066)
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Keywords | 葬送の生前契約 / 終末期医療 / 持続的委任法 / 葬送習俗 / アジアの葬送文化 / 葬送法 |
Research Abstract |
平成13年度より人が終末期における医療や介護そして葬送へどのような意思を残すか、また意思を表明するその方法の選択肢があるかについて、諸外国との比較研究をするために、現地調査を中心として行った。平成14年度は、特に、葬送への意思の表明を重点的に捉えるために、まず、葬送の伝統や習俗を捉えることが必要であるので、欧米およびアジア各国を現地調査し、またわが国との比較を行うために、わが国の葬送の生前契約を行う諸団体に対して調査を行った。さらに、死にゆく過程の医療であるわが国における終末期医療への意思に関する調査をホスピスケアに携わる医療機関に対して実施した。死後の葬送への意思の表明に関しては、アメリカの葬送の生前契約がアメリカ本国のみならず、アジア諸国においても普及し始めていることが明らかになった。アメリカにおいては、戦後のベビーブーマーが高齢期に近づいてきていることから、高齢期の備えとしての生前契約、また、生命倫理の認知が終末ケアへの意思の表明および病院・在宅を問わず終末期ケアへの意思が患者に求められる社会になり、高齢期の自立準備が、死を視野に入れてきていることが本研究の調査の結果浮き彫りにされた。わが国においては、ホスピス(緩和ケア病棟)への入院そのものが終末期医療への意思を表明したと解されているため、ケアが重視されていること、医療への意思と葬送への意思の表明は全く異なったものであるという捉え方をしており、「生から死、死から葬送への連続した意思」としてはつかみにくく、葬送への意思すなわち生前契約についてもアジア諸国とはさらに異なったものであり、それは「日本型」といえる。アジア諸国にも徐々に見られるようになったホスピスそしてアメリカ型の葬送への生前契約の広がりは、「アジア型」としてわが国とは異なる進展の方向性を示している。また、終末期医療と葬送は、ヨーロッパ諸国とアメリカでは異なる様相を示している。わが国はアメリカ型とアジア型の中間にあって、独自の自立準備として進展していく方向性が見えてきた。これまでになかった終末期・葬送への意思の国際研究の成果である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 武田 淳: "北前船幻想-人が運んだものと文化-"人間文化 神戸学院大学人文学会誌. 17号. 63-72 (2002)
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[Publications] 武田 淳: "樹液飲用の文化誌:伝統的利用と技術"佐賀大学農学部彙報. 87号. 37-51 (2002)
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[Publications] 栗原 淳: "佐賀県における高校生の抑うつ病とその問題関連要因について"佐賀大学文化教育学部研究論文集. 第6集第2号. 285-291 (2002)
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[Publications] 北川慶子: "「高齢期の生活課題と葬送の生前契約」日中社会福祉論文集"中国・遼寧師範大学出版局. 320 (2003)