2002 Fiscal Year Annual Research Report
WTO諸協定のもつ発展途上国へのイノベーションインパクト
Project/Area Number |
13572012
|
Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
大野 健一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (40240684)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畠中 薫里 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (10265556)
長岡 貞男 一橋大学, イノベーションセンター, 教授 (00255952)
山根 裕子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70200772)
|
Keywords | 特許権の保護範囲 / グローバリゼーションと知財保護 / 医薬品アクセス / 地域協力 / 知財の権利行使 / ライセンス契約と途上国 / 知財保護と投資 / 知財保護と公共利益 |
Research Abstract |
I.14年度の共同研究は次のテーマを中心とし、内外の専門家およびメンバーによる研究会を開催した。 (1)Intellectual Property Rights in the Globalized Economy(2)特許保護と医薬品アクセスの問題 (3)中国のWTO加盟、知財保護と経済発展(4)TRIPS協定とITの著作権保護 (5)移行経済と知財保護およびイノベーション(6)ライセンス契約と途上国の経済発展およびイノベーション II.共同テーマのもとに下記の個別研究がなされた。 特許権の保護範囲と投資インセンティブの相関関係 特許権の執行の強さは、司法制度や、国、産業によって異なる。特許権の執行の強さが異なると、最適な特許権の保護範囲も異なってくると考えられる。特許権の保護範囲の拡大によって、投資インセンティブが高まるのか。この問題を、差止めの執行成功確率のみが高い場合と損害賠償の執行成功確率のみが高い場合で分析、比較した。それにより、以下の結論が得られた。1)裁判費用が高いため、損害賠償請求も差止め請求も行われないような場合、保護範囲の限界的拡大によって投資は上昇しない。2)損害賠償請求が正の確率で行われる場合、保護範囲の限界的拡大により常に投資は増大するが、差止め請求が正の確率で行われる場合、投資が増大しないことがある。3)投資が実施料を高めるためのコミットメントの役割を果たしているため、特許権者の裁判費用が限界的に上昇すると投資は増大する。 中国の知財保護と研究開発 中国では、研究開発奨励のために知財保護制度をいかに改正したのか。おもに成果の所有権の整備である。おもに(1)職務発明制度(2)発明者、著作物の作者の権利(3)専利権の獲得と専利出願権について調べた。その他、中小企業によるイノベーション基金の設立、研究開発投資に対する税制上(営業および所得税)の優遇措置などの奨励策がとられている。応用開発型科学研究機関を民営企業にして市場に参入させることがさかんである。ストックオプション制度も導入され、会社法も改正された。しかし国家のこのような役割は、中国の研究開発の障害である場合も多い。 TRIPS協定と途上国 途上国でのTRIPS協定の実施状況と権利行使制度および経済発展へのインパクトについてタイおよび中国の例をとって実施研究した。 III.政策研究大学院大学にWOと経済発展に関する資料センターを構築し、文書の整理を行った。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 長岡貞男, 岩崎一郎: "市場経済移行と産業技術の再編成"比較経済体制学会年報. Vol.14 No.1. 1-17 (2003)
-
[Publications] 山根裕子: "直接投資時代の「貿易と労働条件」-WTO-ILO協力の可能性と限界(2)-"貿易と関税. 10月号. 32-43 (2002)
-
[Publications] 山根裕子: "直接投資時代の「貿易と労働条件」-WTO-ILO協力の可能性と限界(1)-"貿易と関税. 9月号. 34-42 (2002)
-
[Publications] 山根裕子: "WTO協定及び加盟議定書の国内法化と私人の権利"中国貿易投資適正化調査報告書. 23-37 (2003)
-
[Publications] 山根裕子: "ガット20条の法的安定性と新ラウンドの課題"国際法外交雑誌. 101巻第4号. 110 (2003)
-
[Publications] 畠中薫里: "「司法環境、特許の保護範囲が投資に与える影響」(後藤晃・長岡貞男編著『知的財産権とイノベーション』)"東京大学出版会. 31 (2003)