2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13572045
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松岡 俊二 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (00211566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 憲司 神戸大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (40299962)
松本 礼史 東亜大学, 総合人間・文化学部, 助教授 (50294608)
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Keywords | VSL / CVM / 便益移転 / 死亡リスク / 非死亡リスク |
Research Abstract |
今年度はCVM手法およびメタ分析による便益移転関数の理論的整理を行うとともに、クアラルンプールおよび広島市において、大気汚染と交通事故による死亡リスク削減に対する支払い意志額(WTP)をCVMにより推計を行った。また便益移転に関しては非死亡リスクを対象に実施した。その結果、CVM調査および便益移転のそれぞれについて、以下の点が明らかになった。 便益移転については、従来用いられてきた線形モデルを利用して国際間の便益移転を実施した。その結果、国際間の便益移転は国内の便益移転に比べて誤差が大きく、人口特性やリスク特性の支払い意志額(WTP)に与える影響を考慮する必要性が確認された。一方、CVMを用いた人口特性やリスク特性に関する調査では、先行研究の予想とは異なる興味深い結果を得た。第一に広島のVSLは2.4〜4.6百万ドル、マレーシアは0.3〜0.6百万ドルと推計された。日本のGDP・PPPはマレーシアの10.2倍であるが、VSLは7.1〜7.9倍であり、VSLの所得弾力性は1以下であった。これまでVSLの所得弾力性をめぐる議論では、それが1以上かどうかで大きく意見が分かれてきた。しかし、本研究とこれまでの先行研究の結果を総合すると、経済成長の過程で所得弾力性が次第に低下している可能性があることが分かった。また、大気汚染による死亡リスクと交通事故による死亡リスクでは、交通リスク削減に対するWTPが大きいことが分かった。これは、従来の先行研究による予想とは異なる結果であり、便益移転において交通リスクのVSLをもって大気汚染のVSLを推計する際には注意が必要であることが明らかになった。 今後の研究では、精度の高い便益移転を実現するためにCVMによる調査地域を拡大し、人口特性やリスク特性がWTPに与える影響をさらに詳細に検討する予定である。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] Kochi, K., Matsuoka, S., Mushtaq, A.M., Shirakawa, H.: "Cost Benefit Analysis of the Sulfur Dioxide Emissions Control Policy in Japan"Environmental economics and policy studies. (2002)
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[Publications] 松岡俊二, 本田直子: "ODA事業評価における専門性と総合性"国際開発研究. 10(2). 49-70 (2001)
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[Publications] Mushtaq A.M, Matuoka, S: "Benefit transfer function to estimate WTP for rural water supply in Pakistan"国際開発研究. 10(2). 101-119 (2001)
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[Publications] Mushtaq A.M, Matuoka, S: "Household characteristics, health benefits, and willingness to pay for rural water supply in Pakistan"開発関係研究. 10(1). 121-137 (2001)
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[Publications] Takeuchi, K, Kuriyama, K: "Value of coastal ecosystem : why and how citizen's preference matter"The 5th International Conference on the Environmental Management of Enclosed Coastal Seas EMECS 2001 -ABSTRACTS. 136 (2001)
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[Publications] 松岡俊二, 松本礼史, 本田直子: "環境クズネッツ曲線と環境政策・環境協力"環境経済政策学会2001年大会報告要旨集. 96-97 (2001)
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[Publications] 白川博章, 松岡俊二: "SL研究におけるCVMスコープ無反応性に関する研究"環境経済政策学会2001年大会報告要旨集. 244-245 (2001)
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[Publications] 本田直子, Azrina S, 白川博章, 松岡俊二: "CVMにおけるVisual Aidsに関する実証研究-マレーシアを事例として-"環境経済政策学会2001年大会報告要旨集. 246-247 (2001)
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[Publications] Mushtaq A.M, Matuoka, S.: "Validity of benefit transfer function to WTP in developing countries"環境経済政策学会2001年大会報告要旨集. 218-219 (2001)
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[Publications] 松本礼史, 松岡俊二, 澤津直也: "地域間格差から見た中国・排汚収費の政策効果分析"環境経済政策学会2001年大会報告要旨集. 284-285 (2001)
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[Publications] 竹内憲司, 岸本充生: "表明選好アプローチによる確率的生命価値の推計"環境経済政策学会2001年大会報告要旨集. 196-197 (2001)
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[Publications] 澤津直也, 松岡俊二, 松本礼史: "中国・排汚収費の政策効果に関する統計的分析"第12回国際開発学会全国大会要旨論文集. 446-451 (2001)
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[Publications] 白川博章, 松岡俊二, 本田直子: "CVMによる環境リスク削減の便益評価に関する研究-日本・マレーシアを例として-"第12回国際開発学会全国大会要旨論文集.
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[Publications] Sujitra, V., Matsuoka, M., Mushtaq, A.M.: "Valuation of air pollution related health effects in Bangkok, Thailand : Aplication of meta-analysis based benefit tranfer function"第12回国際開発学会全国大会要旨論文集. 440-445 (2001)