2003 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯泥炭低湿地の環境保全と持続的生産システム構築のための物質循環インベントリ作成
Project/Area Number |
13574012
|
Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
波多野 隆介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (40156344)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 京 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (30203235)
米林 甲陽 京都府立大学, 農学部, 教授 (00046492)
岡崎 正規 東京農工大学, 大学院・生物システム応用科学研究科, 教授 (00092479)
豊田 剛己 東京農工大学, 大学院・生物システム応用科学研究科, 助教授 (30262893)
倉持 寛太 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (00225252)
|
Keywords | 熱帯泥炭 / 森林火災 / 温室効果ガス / 有機物分解 / 窒素循環 / 微量元素 / 炭素循環 / 環境保全 |
Research Abstract |
1)熱帯泥炭は重要な炭素貯蔵庫であるが、一方主要なメタン発生源とされている。土地の開発と泥炭火災は泥炭地からの炭素放出を増加させ、地球温暖化を助長する。熱帯泥炭における農業と泥炭火災が地球温暖化に及ぼす影響を評価するため、森林、農地および火災中の主要温室効果ガスであるCO_2、CH_4、N_2O放出を測定した。泥炭火災の温暖化ポテンシャル(GWP : CO_2当量の温室効果ガス放出)は、自然森林のGWPの17倍であり、樹木の燃焼によるGWPより4倍大きかった。その77%はCO_2が占め、CH_4とN_2Oはそれぞれ22%、0.14%を占めた。泥炭と樹木の燃焼の合計のGWPは37kgCm^<-2>yr^<-1>で森林の純一次生産の約37倍と見積もられた。火災後のGWPは自然林の32から42%に低下し、その99%はCO_2放出によるものであった。ただし、植物が消失したため、CO_2は直接大気へ放出される。自然林、再生林土壌はCH_4を吸収していたが、火災地はCH_4を放出した。農地のGWPは自然林の2倍であった。CO_2放出は日本の農地土壌の5倍であり、GWPの50から90%を占め、残りはN_2O放出が占めた。N_2O放出は平均窒素施与量(91kgNha^<-1>yr^<-1>)の30から160%を示した。これは、泥炭の分解と農地土壌の高いpHと高い交換性Ca含量のためであると思われる。熱帯泥炭における森林火災は農業のインパクトより圧倒的に大きかった。ただし、窒素施肥は有機物分解を促進するかもしれず、N_2Oの放出を助長し、CH_4の吸収を抑制した。 2)インドネシア中央カリマンタンの泥炭質土壌に立地する森林(天然林、回復林、燃焼地)、農耕地および鉱質土壌に立地する農耕地の表面水、地下水水質を調査し、土壌や火災が水質に及ぼす影響を検討した。また、泥炭質土壌の森林、農耕地では、経時的に水質の変化を調査し、季節変動、火災などの影響を検討した。 その結果、森林の土壌水の窒素、リン濃度は天然林、回復林、燃焼地の順で低くなる傾向にあった。火災直後には河川水水質に大きな変化は見られなかったが、4ヶ月後に窒素、リンともに著しく上昇した。 農耕地では、河川水、表面水のリン濃度に大きな違いが見られ、リン濃度は施肥量が少ない泥炭質土壌の方が圧倒的に高かった。この違いは、泥炭質土壌の低いリン酸吸収係数、高いTruog-Pに由来していた。実際、泥炭質土壌の農耕地に設置したライシメータでは、最大20mgL^<-1>の高濃度のリンが溶脱していた。世界各地の泥炭質地域の河川、土壌溶液と比較すると、カリマンタンのリン濃度は最も高い値であった。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Anwar S., Kosaki, T., Yonebayashi, K.: "Cupric oxide oxidation products of tropical peat soils"Soil Science and Plant Nutrition. 50・1. 35-43 (2004)
-
[Publications] Hatano, R., Osaki, M., Limin, H.S.: "Nitrogen budgets in different types of agricultural systems in central Kalimantan, Indonesia"Proceedings of the International Symposium on "Land Management and Biodiversity in Southeast Asia". 241-247 (2003)