Research Abstract |
本年度は中国における漢方生薬「麻黄」の主産地である内蒙古自治区,青海省,甘粛省において現地調査を行なった.また,本年度はマオウ属植物の花期と果実期に調査した. 内蒙古自治区へは6月3日から18日迄,日本から御影,高橋,吉澤(研究協力者)の3名が赴き,中国で北京大学葯学院の陳虎彪教授と合流して,ジープを借り上げて現地調査を行なった.本調査では目的としたマオウ属植物Ephedra sinicaを全17箇所で調査採集した.採集地では,採集地の緯度経度,標高等を記録するとともに,生育地の土壌水素イオン濃度等の測定のための土壌サンプルを収集した.また,必要に応じて,聞き取りによる資源状況の調査や,DNA解析用の資料蒐集をも行なった. 青海省,甘粛省へは7月19日〜8月23日まで,日本から御影,高橋,胡井(研究協力者)が赴き,中国では重慶中葯研究院の李泉松研究員が参加し,ジープを借り上げて調査した.その結果,Ephedra intermedia, E.equisetina, E.przewarskiiの3分類群を全46箇所で調査採集した.調査内容は内蒙古自治区と同様に行なった. 本年度の調査で明らかになったことは,調査地では急速に資源が減少していることである.その主たる原因として,農地への開墾,生存競争に弱いと云うマオウ属植物の性質,過剰な採集,過放牧,降雨の減少などが明らかになった. 帰国後,全標本を整理し,重複標本を共同研究する北京大学葯学院,中国科学院植物研究所等へ寄贈した.蒐集した資料を用いて,すでに植物分類学的,組織分類学的,成分化学的,分子生物学的研究に着手している.また,育種学的研究を目的に持ち帰った種子を播種し,これまでに8割程度が発芽している.また,挿し木法による増殖研究なども開始した.
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