2003 Fiscal Year Annual Research Report
アジア諸国に蔓延する薬剤耐性マラリアのエビデンスに基づいた疫学研究
Project/Area Number |
13576012
|
Research Institution | International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
狩野 繁之 国立国際医療センター, 研究所, 部長 (60233912)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 守 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60056033)
河津 信一郎 国立国際医療センター, 研究所, 室長 (60312295)
|
Keywords | マラリア / 薬剤耐性 / 疫学 / 国際研究者交流 / タイ:フィリピン:ラオス |
Research Abstract |
本年度は、アジア諸国(フィリピン、タイ、ラオスを特定)に蔓延する薬剤耐性マラリアのエビデンスを捉え、それに対処する治療法の開発に関する研究の展開を目的として、以下の結果と考察を得た。 1)フィリピンのミンダナオ島、パラワン島、およびルソン島のマラリア流行地域から患者検体を採取し、in vitroでの薬剤耐性試験および同原虫のクロロキン耐性関連遺伝子(pfcrt,pfmdr)の解析を行った。その結果、それぞれの島における原虫のgenotypeは異なったタイプを示し、パラワンはベトナムなどの大陸型、ミンダナオはパプアニューギニア型を示した。これによりそれぞれの地域における人口移動と薬剤耐性の拡散との関係、さらにはマラリアの地域限局的な疫学様相が合わせて理解された。なお、どの島の原虫もメフロキンに対しては感受性であったので、フィリピンの国家的薬剤政策に新に指定された抗マラリア薬(Coartem)は、臨床応用としては時期尚早と判断された。 2)タイ・ミャンマー国境の多剤耐性マラリアの患者管理に関し、アーテスネートを中心としたcombination therapyの効果に関して、マヒドン大学熱帯医学部のSornchai熱帯医学部長(海外共同研究者)とともに臨床試験を行った。その結果、新規合剤のdihydroartemisinin-napthoquine-trimethoprim(DNP【○!R】)およびartemether-lumefantrine(Coartem【○!R】/Riamet【○!R】)が、合併症の伴わない熱帯熱マラリア患者に極めて有効であることが判明し、同地域における薬剤耐性マラリア対策に有用であることが示唆された。 3)さらにラオス南部の県におけるin vivoおよびin vitroの薬剤感受性試験の対照実験を展開した。本年度は、in vitroではWHOキットを使用した現地試験を行い、in vivoでは28日間患者の経過を観察した。その結果、ラオスの薬剤耐性マラリアの疫学状況としては、クロロキン軽度耐性、ファンシダール感受性、メフロキン感受性と考えられた。 以上のように、薬剤耐性に関わる指標を種々得ることで、アジアに蔓延する薬剤耐性マラリアの対策につながる基礎的な研究成果の構築ができたものと考えられる。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Hatabu T, 他: "Binding of Plasmodium falciparum-infected erythrocytes to the membrane bound form of fractalkine/CX3CL1"Proc Natl Acad Sci USA. 100(26). 15942-15946 (2003)
-
[Publications] Hatabu T, 他: "In vitro susceptibility of Plasmodium falciparum isolates to chloroquine and mefloquine in southeastern Mindanao Island, the Philippines"Southeast Asian Trop Med Pub Hlth. 34(3). 546-551 (2003)
-
[Publications] Krudsood S, 他: "Comparative clinical trial of two-fixed combinations dihydroartemisinin-napthoquine-trimethoprim (DNP) and artemether-lumefantrine (Coartem/Riamet) in the treatment of acute uncomplicated falciparum malaria in Thailand"Southeast Asian Trop Med Pub Hlth. 34(2). 316-321 (2003)
-
[Publications] 石崎有澄美, 他: "わが国で初めてArtemether-Lumefantrine合剤で治療した輸入熱帯熱マラリアの1症例"感染症学雑誌. 77(1). 34-37 (2003)
-
[Publications] 狩野繁之: "薬剤耐性マラリア、新世紀の感染症学(下)-ゲノム・グローバル時代の感染症アップデート-"日本臨床. 61(Suppl 3). 214-220 (2003)
-
[Publications] 狩野繁之: "マラリアの新しい診断・治療法"Clinical Parasitology. 14(1). 13-16 (2003)