2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610007
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川添 信介 京都大学, 文学研究科, 助教授 (90177692)
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Keywords | スコラ哲学 / トマス・アクィナス / ドゥンス・スコトゥス / 合理性 / キリスト教信仰 |
Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続いて、トマス・アクィナス、ボナヴェントゥラ、ダキアのボエティウス、ブラバンティアのシゲルス、ドゥンス・スコトゥスといった13世紀から14世紀初頭のスコラ学者の原典テキストの厳密な読解の作業が行われた。とりわけ、哲学的「合理性」とは対極にあると考えられているキリスト教「信仰」が、いわばメタレベルにおいてどのようなタイプの人間の行為として哲学的に措定されているのか、という論点に集中した吟味が加えられた。その結果、アクィナスに代表されるような、信仰を基本的には人間の「認知作用」の一種であると見る立場から、スコトゥスのように知性という認識能力よりはむしろ意志や情動といった非認知的な側面に強調点を置く立場まで、同じスコラ神学者内部でも相当に多様なとらえ方が存在していたことが確認されることになった。そしてまた、シゲルスのように神学者ではなく学芸学部においてギリシア的哲学の教授をなしていた学者たちには、その信仰観においてアクィナスよりはむしろスコトウスの立場に類似した面のあることも明らかにされた。そして、このような多様性の存在の背景として、1270年代のパリを中心としたキリスト教世界の一種の保守化運動(反自然主義の運動)の存在があったことが明らかとなった。 以上の「信仰概念」といういわば裏側からの合理性概念の明晰化を経て、最終年度は上記の諸学者においてより直接的に、合理性概念(rationabilitas)がどのように把握されていたのかを明確にすることが試みられることになる。
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Research Products
(2 results)