2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610015
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
柴田 隆行 東洋大学, 社会学部, 教授 (20235576)
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Keywords | フォイエルバッハ / 哲学史 / 懐疑主義 / ブーレ / ピエール・ベール / 宗教批判 |
Research Abstract |
哲学史は、カント後期に学として成立し、ヘーゲルにおいて頂点を極め、ヘーゲル没後に解体し始めた。いまでは各哲学についてのモノグラフィーの集成か資料集として生き延びているにすぎない。だが、フォイエルバッハがその初期に、ヘーゲル哲学史を真剣に学んでいたときのノートや、私講師として大学で哲学史を講義していたときの講義録を読むと、哲学史がその後たどったのとは別の道が開かれつつあったことがわかる。それを実証的に明らかにすることがこの研究の課題である。 昨年の夏にミュンヒェン大学図書館に所蔵されているフォイエルバッハ遺稿ならびに関連する諸資料を閲読・解読し、この確信を強めるとともに、その鍵になる点が彼の懐疑主義への注目にあることがわかった。具体的には、フォイエルバッハはブーレの哲学史を細かくノートしつつ、とくに古代ローマの懐疑主義とそれに基づく自由論を熱心に研究している。このことが、彼の哲学史3部作の1つとなったピエール・ベール研究に発展したのではないかと思われる。 懐疑主義との闘いはカント以降すでにフィヒテやシュルツェが行い、そこから独自の意識論が生まれることになるわけであるが、フォイエルバッハの場合には、懐疑主義はむしろ宗教批判の道具として肯定的に利用される。しかしその際、彼は、たんに懐疑主義を振り回して宗教を批判しようとするのではなく、哲学史の独自の試みとして注目されるベールの『哲学的批判的事典』を詳細に研究して、懐疑主義的方法によって新しい知の枠組みを提示しようとしたのである。 研究成果の公開はこれからであるが、小論「フォイエルバッハと啓蒙」(2001年11月、『季報唯物論研究』第78号、6〜13頁)で研究の方向を示唆した。
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