2001 Fiscal Year Annual Research Report
インド大乗仏教瑜伽行唯識学派における聖典継承と教義解釈の研究
Project/Area Number |
13610019
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
早島 理 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60108272)
|
Keywords | 『顕揚論』「成瑜伽品第九」 / 『瑜伽論』「摂事分」 / 『顕揚論』「攝事品第一」 / 阿含経典の継承 / 信・欲・正勤・方便 / 無分別智 / 事vastu / 取離言相性 |
Research Abstract |
(1)インド大乗仏教瑜伽行学派にとっての根本聖典(経・律)は「事vastu」と称され、その集積が「摂事分」である。本年度は同学派の思想を確立した無着Asangaの代表作『顕揚聖教論』のうち「摂事品第一」・「摂淨義品第二」を中核にして、両章を受けて具体的思想内容を展開した各章のうち、主に「成瑜伽品第九」の解読研究に従事した。 (2)「瑜伽品」の解読研究を中心とした研究の成果は次の如くである。 (1)『顕揚論』では、瑜伽は因、現觀は果の関係にあり、また瑜伽と正行・正慧・方便・道理は同義とされる。 (2)「成瑜伽品」は「摂淨義品」を受けて、「信・欲・正勤・方便」の四種瑜伽を説くが、これは雑阿含経典「転法輪経」→『瑜伽論』「聲聞地」・「摂事分」を継承したものである。 (3)「成瑜伽品」では瑜伽を支えるものとして「無分別智」を強調し、この学派の独自の狭義である三性説を導入する。 (4)「成瑜伽品」は「無分別智」について「雖不取如所言相性、而取離言相性」という。『攝大乗論』などと比較しても、瑜伽行学派の無分別智の成立を考える上で、極めて重要な概念と言えよう。 (2)以上の研究成果は、「『顕揚聖教論』「現觀品第八」について」と題して平成13年度日本インド学仏教学会(於東京大学、平成13年6月)、並びに「瑜伽行派における信仰について」と題して平成13年度日本仏教学会(於身延山大学、平成13年10月)において口頭発表され、それぞれの学会誌に掲載された。 (3)学会発表とは別に、『顕揚論』「成瑜伽品第九」の解読研究を、対応する『瑜伽論』との比較研究のかたちで完成し、公表の準備を進めている。 (4)瑜伽行学派における思想展開の一資料として、おなじく無着の著作とされる、『大乗阿毘達磨集論 Abhidharmasamuccaya』・『大乗阿毘達磨雑集論 Abhidharmasamuccaya-Bhasya』「本地分」の梵文-蔵訳-漢訳の三本対照校訂テキストを作成中である。ただ元テキストの版権の問題があり、公表様式を考慮中である。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 早島 理: "瑜伽行派における信仰について、…『顕揚聖教論』「成瑜伽品第九」を中心に…"日本仏教学会年報. 67. 215-226 (2002)
-
[Publications] 早島 理: "『顕揚聖教論』「現觀品第八」について"印度学仏教学研究. 50-1. 361-364 (2001)
-
[Publications] 早島 理: "インド大乗仏教瑜伽行派における聖典継承の研究"古典学の再構築「第I期 公募研究論文集」. 264-281 (2001)
-
[Publications] 早島 理、他: "生死を問う、…医療現場をめぐって…"本願寺出版社. 103 (2001)
-
[Publications] 早島 理、他: "神子上恵生教授頌寿記念論集"永田文昌堂. 325 (2002)