2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610046
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
寺田 元一 名古屋市立大学, 人文社会学部, 教授 (90188681)
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Keywords | 創発 / 創発論 / 機械論 / 生気論 / 啓蒙 / 生命 / 自然観 / 18世紀 |
Research Abstract |
本研究課題に関わって、最近次の重要研究が公刊されており、その検討から研究をスタートさせた。それらは、Roselyne REY, Naissance et developpement du vitalisme,2000 とTimo KAITARO, Diderot's Holism,1997、Guido Cimino, Francois Duchesneau(ed,), Vitalisms from Haller to the Cell Theory,1997である。これらを読み、生気論や全体論など18世紀の創発論的自然観に関わる研究の状況、問題系、それぞれの論者の研究の特徴などを把握することができた。その結果、18世紀の創発論的自然観を明らかにする上で、生気論の論理構造を批判的に吟味することが決定的に重要であることが理解できた。また、「生気論」というvitalismeの訳語にづいても、こうした研究を踏まえで「活力論」と呼ぶのがふさわしいと考えるに到った。そこで、以下ではこれを「活力論」と呼ぶことにする。 次に、当時の原書の検討に進んだ。まず、Theophile de Bordeu, Recherches anatomiques sur la position des glandes et de leur action,1751とRecherches sur quelques Points d'Histoire de la Medecine,1764。ボルドゥは活力論者とされるが、事態はそんなに単純ではない。彼は、分泌器官における分泌を、単なる器官の「活力」によってではなく、器官固有の構造や器官相互の関係さらには神経系との関係を通じて把握している。ついで、Haller, Elements de physiologie,1752とA Dissertation on the Sensible and Irritable Parts of Animals, London,1755。ハラーはディドロに影響を与えたばかりか、ボルドゥなどモンペリエ学派の活力論の発想元にもなっている。前著は生理学全般を論じたハラー初期の大部の著書である。ここではまだ彼の有名な「被刺激性」の概念は登場していない。だが、それを包摂しうるような理論的構えは登場している。後者で著名な「被刺激性」概念が「感性」と区別されて登場する。その区別は彼の身体観全体から構造的に導き出されている。また、<<Crise>>,<<Irritabilite>>,<<Economie animale>>,<<Physiologie>>,<<Sensibilite>>など『百貨全書』の項目に現れたモンペリエ学派の活力論的生物観も検討した。 現時点で、今年度の主たる研究対象としたハラーとモンペリエ学派について次のような成果が得られた。すなわち、レーやカイタローらに学びつつも、彼らに若干欠けている、物質における構造と機能とのカテゴリー連関に注意して問題を考察することから事態に迫る必要性である。そこから、創発論をそうした論理の一つとして明確化できるであろう。
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Research Products
(1 results)