2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610046
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
寺田 元一 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 教授 (90188681)
|
Keywords | 創発論 / 生気論(活力論) / 構造・機能 / 有機構成(organisation) / 生動的機序(□conomie animale) / 18世紀 / フランス / 啓蒙思想 |
Research Abstract |
Roselyne REY, Naissance et developpement du vitalisme, 2000とTimo KAITARO, Diderot's Holism, 1997とともに、今年度は、Francois Duchesneauの大著La Physiologie des Lumieres, 1982も含めて導きの糸として活用した。その結果、1)18世紀の生理学、生命像の発展を通じて、アニマやアニミズムに頼らずに、生命を構造と機能の動的相関として捉えようとする問題系がずっと継続的に存在していたこと、2)それへの回答の試みとして、機械論、生気論、創発論など、基礎となる生命観は異なるが、相互に連関し合う回答、理論化の連鎖が形成されていったこと、3)諸説の論争や相互浸透を通じて、生命の基本構造・機能から出発して、徐々に高度化していく、諸階層を有する動的立体的organisationという新たな生命像、そして、それに基づく新たな生命科学である生物学が作られたことが、明らかになった。 研究の出発点では、機械論対生気論という対立とは別に、いわば第三の道として、創発論が伏在していたのではないかと考え、その発掘を試みたのであったが、研究を通じて、むしろ機械論者や生気論者のうちにも、いたるところに創発論的な問題系があることが明らかになった。というのも、そもそも構造機能論的問題系自身が、より高次のレベルにおいて新たな構造が生まれると、そこに低次のレベルにはなかった性質・機能が創発するという論理を内在させているからである。 こうして、今年度は、そうした18世紀の生理学、生命像に通底する構造機能論的問題系を背景に、主として、ハラー、ディドロ、モンペリエ学派の生気論生命観のうちに、生気論として通常イメージされるものとは異なる、創発論的契機を見出すとともに、諸階層を有する動的立体的organisationという新たな生命像を準備し、それらが18世紀後半の「生命の科学」や生命像を転換していったことを明らかにした。
|
Research Products
(1 results)