2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13610059
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
椎原 伸博 玉川大学, 文学部, 講師 (20276679)
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Keywords | 文化政策 / 文化芸術振興基本法 / メセナ / NPO / 公共圏 / ポストフォーディズム / パブリックアート / オルタナティブエコノミー |
Research Abstract |
研究初年度は、最初に外国旅費を用いて、1)大規模な都市計画と連動した美術館建設の事例(ロンドン、ビルバオ、パリ)と、2)現代美術の国際展を開催する事例(ベネチア、リヨン、バルセロナ)の調査を行った。前者では、美術館が都市におけるアメニティ空間として多くの観客を動員し、経済的な成功をもたらしていることが確認された。それは、魅力的な建築と積極的な美術館経営によりもたらされたものであるが、それにより文化的なヘゲモニーが追究されることにもなる。 この傾向は、後者においてより顕著であると思われる。例えば100年以上の歴史をもつベネチアビエンナーレの存在理由は、新しい芸術動向を提示する場というよりも、様々な国際展で活躍する作家の見本市といった感は否めない。既に、国際展は飽和状態であり、国際展は政治的な側面を強めることになる。それは、横浜で開かれた国際展の問題点にも繋がるものであり、市民を中心とするオルタナテイブな意識の必要性が要請されよう。 一方、国内に目を向けると、経済不況で芸術支援が低迷するなか、議員立法により文化芸術振興基本法が制定された。しかし、この法律は国民の意見を反映したものではなく、拙速なものと言わざるをえない。というのも、この法律では国民の文化権が軽視され、国家中心的な文化政策を志向するものとなっているからである。それは、NPOやNGO、自発的な市民らによって形成される芸術活動に対する配慮を欠いたものであり、本研究のテーマに真っ向から対立するものである。 そのため、他の文化政策研究者との意見交換を積極的に行うとともに、彼等とともに「文化政策提言ネットワーク」を立ち上げ、国民の権利である文化権の規定を明確にすることや、国民主体の文化政策の必要性を提言してきた。それは、自由な公共圏のなかで成立する芸術の可能性を追求する立場でもあった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 椎原 伸博: "学芸員資格の有効性について"アートマネジメント研究(美術出版社). 2号. 15-22 (2001)
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[Publications] 椎原 伸博: "建築における色彩と透明性-初期ル・コルビュジェにおける色彩をめぐって-"美学(美術出版社). 207号. (2001)
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[Publications] 椎原 伸博: "建築における色彩と透明性-初期ル・コルビュジェにおける色彩をめぐって-"玉川大学文学部紀要 論叢. 42号. (2002)