2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610059
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
椎原 伸博 実践女子大学, 文学部, 助教授 (20276679)
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Keywords | ポストフォーディズム / 公共性 / オルタナティブ / モダニズム / ポストコロニアリスム / モニュメント / パブリックアート / 所有 |
Research Abstract |
2002年4月に大韓民国光州市で開催された、第四回光州ビエンナーレの調査を行った。この国際展はアジアで最大規模を誇るものであるが、01年9月11日の同時多発テロ以降の現代芸術の方向性を指し示すものとして注目された。なぜならば、主会場ではアジアとヨーロッパから26のオルタナティブスペースが招かれ、それぞれの活動報告という形の展示が行われたからである。 それは、作家の作品を展示するという展覧会の自明な活動が、西洋中心主義的なモダニズムの賜であることへの反省行為であり、作家や作品が積極的に社会と関わることの意味を再考させるものだった。そこにおいては、芸術作品をめぐる経済システムも疑問視され、私的所有制度の限界を見据え、公共性の意識の下で、自発的なヴォランティアや協働作業の重要性が認識され、地域通貨の導入など新しいシステム構築への模索がなされていた。 これは、ポストモダンの時期において、アジアやアフリカの美術を発見し、西洋の展覧会システムの中へと再編成(搾取)していったことの反省行為でもあり、ポストコロニアリスムや文化多元主義といった問題意識のなかで、現代芸術を考察することを意味するだろう。そしてそれは、ナイジェリア出身のオクウィ・エンウェゾーをディレクターに迎えたドクメンタXIにおいても顕著であった。 02年8月にドクメンタXIの現地調査を行い、トーマス・ヒルシュホルンの作品に注目した。彼のバタイユモニュメントというインスタレーションは、トルコ人労働者が多く住む地区において、住民との協働作業において成立し、住民によって管理運営されていた。それは、永遠的に場を占める上からのモニュメントに対し、一時的に場を占める下からのモニュメントの提案であり、誰も所有できない空間=公共圏を意識させるものであった。そこには、モダニズムの美学を乗り越えていく方向性が示され、ポストフォーディズム時代における芸術の可能性を示すものといえるだろう。
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Research Products
(2 results)