2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610062
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Research Institution | DOSHISHA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
太田 孝彦 同志社大学, 文学部・文化学科, 教授 (70098169)
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Keywords | 江戸時代 / 美術史学 / 画譜 / 大岡春卜 / 和漢名筆画本手鑑 / 和漢名画苑 / 戯画 / 鳥羽絵 |
Research Abstract |
本研究は今まで等閑視されがちであった江戸時代の画譜に焦点を当て、それらがどのような作品をどのように収録しているかを分析することによって、江戸時代の美術史学の様相を解明することであった。そこで、大岡春卜が出版した『和漢名筆画本手鑑』(享保五年1720)と『和漢名画苑』(寛延三年1750)を取り上げ、そこに春卜の美術史観を窺った。 『画本手鑑』において、彼は対象をよく知ることによって把握される動物の生態を生き生きと描きだす行為を重視する。粉本からの離脱である。次に、そのことと矛盾するが、装飾性という姿や形の美しさこそが世に賞賛されていると位置づける。さらに「鳥羽絵」を多く収録している。そのことに着目し、その意味するところを分析した。春卜は、鳥羽絵を奇想天外な意表をつく光景を略筆で描く「狂画」として「風流」な嗜みとして評価した。そして『名画苑』では、長崎に伝えられた最新の技法と感覚を評価する。彼の関心が絵画の革新であることを告げる。また、一種の遊びの精神に満ちた絵、絵画におかしみを持ち込んだ作品、素人の絵画を高く買っていることも注目される。このように、春卜は絵画革新の時代的潮流を敏感に感じ、「戯画」である鳥羽絵が持つ「諧謔性」を従来にない絵画の特質と認識していたのである。鳥羽絵は町人の自由な精神の発露であり、これこそがあるべき絵画であると大岡春卜は主張していたことを明らかにした。これが十八世紀初頭に生きた春卜の絵画観である。それは江戸時代の人たちに大いに受け入れられ鳥羽絵の流行となった。
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Research Products
(1 results)