2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
根立 研介 京都大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (10303794)
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Keywords | 美術史 / 日本彫刻史 / 鎌倉彫刻史 / 院政期 / 慶派 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度一部着手した京都に関わる鎌倉前期の彫刻及び関連作品について、主に調査を通じてデータの収集を行った。調査対象としては、まず鎌倉前期の秀作の中で地方所在の重要作品を積極的に取り上げた。すなわち、鎌倉初期、建久年間の造像が伝えられる鳥取・地蔵院地蔵菩薩半跏像や、寛喜3年(1229)銘の熊本・明導寺阿弥陀三尊像がこれである。前者は、丈六の巨像で、作風からしても鎌倉初期に遡るとみられるが、この頃台頭してきた慶派仏師に比すると穏和な作風が認められ、京都仏師が造像に携わった作可能性がある。後者は、慶派の一員とも認められる肥後別当定慶の作風に通じるところがあり、いわゆる宋風の作風が顕著な遺品である。観音菩薩台座銘によれば、日本国匠を称した仏師によるものであり、こうした「日本国」を前面に打ち出す特殊な肩書きも注目されるが、出来映えは非常に優れ、作者として肥後別当定慶との関わりはひとまずおくとして、都の仏師を想定すべきかと思われる。この三尊像が所在する地域が、後白河法皇ゆかりの蓮華王院領との関係が想定される点も注目される。なお、本三尊像の作者としては、銘文中の「僧実明」とする説が有力であるが、この銘文の解釈については、なお検討を要するように思われる。この他、鳥取の調査では、鎌倉前期に先立つ平安後期の基準作である三仏寺蔵王権現像(1168年作)、大山寺阿弥陀三尊像(1131年銘)なども調査した。また、鎌倉時代初頭に台頭する慶派仏師の作品については、京都に所在する主要遺品の調査を続行した。本年度は、快慶初期の作品として名高く、金泥・切金仕上げの初期遺品としても注目される京都・遣迎院阿弥陀如来立像と、運慶の子息の一人、康勝の手になり、当代を代表する肖像彫刻として名高い六波羅蜜寺空也像の詳細な調査を実施し、慶派の遺品データの収集に努めた。なお、文献史料からの情報収集については、継続的に行っている。
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Research Products
(2 results)