2001 Fiscal Year Annual Research Report
把持運動における下位運動成分間の協応関係に関する研究
Project/Area Number |
13610078
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
工藤 信雄 新潟大学, 人文学部, 助教授 (10234452)
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Keywords | 把持運動 / 視覚フィードバック / 運動制御機能 / 握り成分 |
Research Abstract |
静止した物体に手を伸ばし,これをうまくっかむ運動(把持運動)には,まず対象の位置や距離,大きさを視覚的に分析し,その分析結果に適合するような運動プログラムを形成しなければならない。従って,物体の位置まで手を移動させるプロセス(移動成分)と物体の大きさに応じて手を開くプロセス(握り成分)の決定には,運動開始前に得られた視覚情報と運動中のon-lineでの視覚情報とが決定的な役割を果たす。本研究では,運動実行中に得られる視覚的フィードバック情報(手と対象との見え)の時間的タイミング(=運動開始後にライトを消す)を操作し,移動成分と握り成分に見られる変化特性を検討した。実験の結果,視覚的フィードバックの効果は特に握り成分に対して顕著であることが示された。最終の握り時点での手の開きの変動性に,視覚的フィードバックの効果が見られ,運動実行中の視覚的情報量が低減するにつれて変動性は大きくなった。これらの結果は,移動成分が単一のフィードフォワード制御を受け,握り成分がフィードフォワード・フィードバックの2相性の制御を受けているという仮説を支持するものである。把持運動の場合,移動成分は指さし運動と異なりピンポイントの位置に収束する必要がなく,この成分ではフィードバック調節を必要としないと考えられる。また,握り成分の最終時相での視覚的フィードバック量に依存した変動性の変化は,この時相での制御特性が課題で要求される精度や制約条件により柔軟に変化しうることを示唆している。しかしながら,最終時点での変動性の増大は,うまく握れていたのかという本質的問題とも関連しており,運動精度とあわせなお検討が必要である。
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