2002 Fiscal Year Annual Research Report
半側空間無視に与える汎性注意障害の影響 ―言語は運動制御に有効か―
Project/Area Number |
13610089
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
関 啓子 神戸大学, 医学部, 教授 (90154640)
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Keywords | 左半側空間無視 / 汎性注意障害 / 方向性注意障害 / 言語 / 行動制御 / 選択的注意 / 右半球損傷 / 液晶ペンタブレット |
Research Abstract |
本研究は,従来方向性の注意障害とされている半側空間無視症状を,汎性注意障害という観点から再検討し,行動制御の手段としての言語の有効性を確認することを目的としている.昨年度は高齢者にはなじみの薄い液晶ペンタブレットの導入の可能性について検討を開始した.「紙と鉛筆」方式と本方式の検査結果の比較を目的に,今年度はデータを蓄積中である。 また,昨年度は注意課題の作成し,妥当性の検討を行った.これは,液晶パネル上にタキストスコープ的手法により視覚刺激を入力する課題で,選択的注意が求められる.結果は興味深いものであったが,必ずしも注意機能を測るために本課題が最適とは考えられなかった. そこで,今年度は新たな注意課題を作成し,前頭葉機能の低下が推測される左半側空間無視患者に対して実施した.課題はこれまでの我々の研究結果(Seki et al.,1998)をもとに決定した.無視患者に基本パターンが2回〜5回連続した刺激を呈示し,できるだけ正確に再現するよう求め,健常者の結果と比較した.健常者では誤りが皆無であったのとは対照的に,無視患者は模写において多くの誤りを示し,それは手本の連続回数に注意を向けられない注意障害の反映と考えられた.患者は自己の模写の拙劣さや字のかすれなどは指摘するものの回数への言及はなく,手本と比較するという行為は出現しなかった.そこで,手本の回数を数えるという言語的手段を外的に与えたところ,全例において誤りは激減し,正答率が0%から100%へと急上昇する患者もみられた.このことから,少なくともこの課題においては言語が患者の行動を制御するために有効であったことが示された.なお,これは本研究の目的に適う重要な結果であり,学会で報告するともに学術論文にもまとめた.来年度は別の注意課題を作成し,リハビリテーション場面を想定した運動制御の点からさらに検討を進める予定である.
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Research Products
(1 results)