2002 Fiscal Year Annual Research Report
認知発達における知覚・運動システムと表象・操作システムの相互作用に関する研究
Project/Area Number |
13610103
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
杉村 伸一郎 神戸女子大学, 文学部, 助教授 (40235891)
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Keywords | 認知発達 / 知覚・運動 / 表象・操作 / イメージ / 描画 |
Research Abstract |
本研究の目的は,幼児期における知覚・運動システムと表象・操作システムの相互作用の様子を空間定位課題をとおして描き出すことにある。具体的には,杉村(1999,2000)が対象が45度ずつ回転するごとに対象の位置を定位させる課題において見いだした,ある角度で突然反対側を指さすという現象の条件分析を組織的に行うことにより,知覚・運動システムと表象・操作システムの発達的関係を明らかにする。 180度で突然反対側を指さす現象が,180度回転すると回転前と見えが同じになる長方形という形が原因で生じたかどうかを検討するために,台形のテーブルの結果を再分析するとともに,新たに円形と正方形のテーブルを用いて実験を行った。その結果,長方形以外のテーブルにおいても,徐々にズレていく連続的な誤りと,ある角度で突然に異なる象限に移動する非連続的な誤りが見いだされた。以上の結果から,3,4歳の子どもは,対象の位置を内的な枠組みにより符号化し,外界とは独立に形成した表象に何らかの操作を行っているために,非連続的な誤りが出現すると考えられた。 また,対象の移動の軌跡を描画させる課題を実施したところ,6歳児では180度回転した後の結果を理解していても,その過程である軌跡を描くことができないことが明らかになった。そこで,描くことができない子どもに様々な問いかけや移動のイメージを浮かべられるような援助を行った。その結果,大部分の子どもは実験者が働きかけても対象の移動の理解において変化を示さなかったが,一部の子どもは問いかけによって自分の描画の矛盾に気がつき,それを統合することができた。以上のことから,知覚・運動システムの働きと表象・操作システムの働きのずれは,2つのシステムの相互作用によって修正されるというよりも,表象・操作システム内の整合性を高めることにより修正されるのではないかと考えられた。
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