2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本人の自己卑下的傾向に関する実験的研究:自己呈示の可能性の検討
Project/Area Number |
13610117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 勧 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80134427)
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Keywords | 比較文化 / 自尊心 |
Research Abstract |
日本人の自己評価表明における自己呈示の可能性を検討するために、自己に利益になる特性(self-profitable)と他者に利益になる特性(other-profitable)との分類を用い、それぞれにおいて自己評価を行うように被験者に求めた。その際に、偽の生理指標を用いて、自分の本当の自己評価が実験者に知られているというように思い込ませた場合には、そうでない場合と比べて、自己に利益になる特性に関する自己評価が上昇したが、他者に利益になる特性に関する自己評価は低下することを見出した。これは自己呈示の意味がないような状況におかれると、より本心に近い自己評価を表出するためと考えられる。この点をより確実にとらえるために、Greenwaldらによって開発されたImplicit Association Testを用いて、自分と自己に利益になる特性あるいは他者に利益になる特性との連合の容易さをコンピュータによって計測した。そうすると、予測どおり、日本人学生でも、アメリカ人と同様に、自分と自己に利益になる特性との連合の方が、自分と他者に利益になる特性との連合よりも容易に形成されることが明らかになった。このことは、日本人が表明する自己評価は、実際に信じているよりも、他者に利益になる特性を強調し、自己に利益になる特性を謙遜しているためと考えられる。次に、このような傾向がどのようにして一般的になっているかについて、他者評価を測定してみた。その結果、自己に利益になる特性を謙遜し、他者に利益になる特性を強調するような自己評価は、他者からもっとも好意的な評価を得られることが確認された。このように、自己利益特性を謙遜し、他者利益特性を強調することは、日本社会の中でもっとも適応的な自己呈示戦略であるということが分かった。
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