2001 Fiscal Year Annual Research Report
説明における知識と推論の発達-理由づけシステムにおける領域知識と推論形式の関係-
Project/Area Number |
13610119
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
内田 伸子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 教授 (70017630)
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Keywords | 説明パラダイム / 領域知識 / 推論形式 / 帰納的推論 / 演繹的推論 / パペットパラダイム / 幼児 / 領域知識と推論形式の関係 |
Research Abstract |
[目的]説明にはいくつかの「理由づけシステム」が働いていると考えられる。理由づけシステムは、(1)領域固有の知識(宣言的知識)、さらに(2)推論形式や(3)推論形式を表出するための言語形式などの手続き的知識から構成されており、これらの下位システムが協働して働くときに説明は適切なものになると想定される。では、幼児の説明は、生活経験や学習による知識の質や量の変化と推論形式の発達とがどのように関わりながら、発達するかを明らかにする目的で幼児と大人を対象にして予備的研究を行った。先行研究を踏まえて合理的推論が活性化されやすいと考えられる条件推論課題を翻案した「説明課題」を作成し、幼児にはパペットパラダイムを用い、大人には実験者に説明する場面を設定して実験を実施した。[実験計画]領域2(生物/人工物)×論理式4(肯定/否定/前件否定/後件肯定)×年齢4(3歳児/4歳児/5歳児/大学生)の3要因計画である。 [結果](1)質問の形式により難易度に年齢差があり、3歳より4歳、4歳より5歳の成績が優れており、5歳と大学生の間には有意差はなく、大人と変わりない真偽判断をしていることが判明した。(2)幼児初期から知識領域が「生物学」「物理学」「心理学」など知識領域が分化しており、領域に関連した知識が使われていることが確認された。(3)領域知識が少ない段階では推論が抑えらるが、知識の増加に伴い帰納的推論や演繹的推論などの合理的な推論形式が活性化されるという関係が窺われ説明パラダイムの妥当性が確認された。平成14年度はこの予備的研究の結果を踏まえて領域知識の概念水準と推論形式の関係を詳細に検討する実験を行う。発話データの質的分析の妥当性を高めるために詳細な発話プロトコルデータを採集するため方法を改善して予備実験を行い、説明パラダイムを改善して予備実験を行い、所記の目的を達成する見通しが得られたので、実験2を実施する準備が整った段階にある。
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