2003 Fiscal Year Annual Research Report
注意欠陥多動性障害を早期に発見する心理学的診断法の開発研究
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13610130
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
近藤 文里 滋賀大学, 教育学部, 教授 (00133489)
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Keywords | 注意血管・多動性障害 / 幼児期 / 行動評定尺度 / DSM-IV / 年齢差 / 性差 / 発達神経心理学的検査 / 観察 |
Research Abstract |
注意欠陥・多動性障害の診断には、DSM-IVが日本で広く用いられている。Dupaulら(1998)は、この行動評定項目を4件法で回答させるADHD Rating Scale-IVを作り、ADHDか否かを数値的に明かにしようとした。このような尺度に基づいた前回までの調査は、幼稚園や保育園の教師を対象に幼児の行動評定をした結果を分析し、年齢差、性差のみならず、米国での調査結果を違いが認められた。そこで、本年度は、教師に評定を依頼するだけでなく、同じ幼児について保護者にも評定を依頼し、両者の評定の差異を年齢や性差を中心に検討した。 幼児一人ひとりについて教師と保護者にADHD診断基準(18項目)を4件法で回答させた。対象幼児は281名で、回収率は教師からは89%、保護者からは66%の回答を得た。 結果については次の通りであった。(1)因子分析の結果、教師の評定、保護者の評定についても、抽出された因子はDupaulらが米国で行った調査と異なり、1因子のみであった。(2)年齢の増大に伴ない評定点は低下が認められた。また、概して男児は女児よりも高いことが認められた。さらに、教師と保護者の評定を比べると、女児の評価については近似するが、男児については大きく異なる結果が認められた。特に、6歳半から6歳11か月の男児については、園では落ち着いてきたととらえているが、家庭では多動や不注意が強まる傾向にあるととらえている。(3)診断基準に基づいてADHDのサスペクト児を抽出したところ、保護者評定の結果にもとづけば12名(11%)、教師評定では15名(14%)が該当した。しかしながら、両者の評定が一致している幼児を抽出すると5名(5%)となり、全てが男児であった。 この他、本年度は、調査で抽出したADHDサスペクト児を含む25名の幼児を対象に、観察と発達神経心理学的検査を実施している。観察システム(BASCのSOS)に基づいて、設定保育場面と自由保育場面での観察を中心に、場面の違いが行動の制御に及ぼす効果を検討している。また、実行機能を中心とした発達神経心理学的検査も行っている。検査バッテリーは、行動抑制機能や作業記憶やプランニング能力をみる12の検査で構成したが、ADHDの疑いが高いとされた幼児では、殆どの検査において特徴的な反応が見られている。今後、それぞれの反応について量的、質的な側面からさらに詳しい分析をしていくことにしている。
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Research Products
(2 results)