2001 Fiscal Year Annual Research Report
教師の「勇気づけ」が児童の学級適応・学校ストレスに及ぼす影響
Project/Area Number |
13610145
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
古城 和敬 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (00145351)
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Keywords | 勇気づけ / 学級適応 / 学級介入研究 / 学校ストレス / 学級集団過程 / 教師期待の認知 |
Research Abstract |
本年度の研究は,2年計画の1年目にあたる。被験者は小学校2〜5年生の児童277名で,そのうち6学級が勇気づけを実践する実験学級,残り4学級が統制学級であった(先行研究の被験者も含まれている)。実験学級の教師には,夏休みから2学期にかけて,勇気づけの考え方や方法についての講習とトレーニング(9セッション,計18時間)を行った。その後,実験学級の教師には2ヶ月の間,継続的に勇気づけを実践するように要請した。統制学級の教師にはそうした介入は一切行わなかった。学級適応などの各測度は,事前,実践中(1ヶ月後),および事後に測定した。 各測度の統計処理は,本来は学級単位のデータ(学級の平均値),を用いるべきであるが,現時点ではまだ学級数が少ないため,個々の児童のデータを用いた。条件(実験学級vs統制学級)×測定時期(事前vs実践中vs事後)の分散分析を行ったところ,「教師期待認知」において交互作用に傾向が見られ(F=2.56,df=2/550,p<.10),事前および実践中においては両学級に差はなかったが,事後では実験学級の方が得点が有意に高いことが認められた。(p<.01)また,学級適応の下位次元「級友関係」においても交互作用が有意であった。その他の測度においては有意な交互作用は認められなかった。 このことから,教師の勇気づけは児童の対教師関係を肯定的に変容させ,さらには児童間の関係にも好影響を及ぼすと考えられる。勇気づけは,賞罰を用いずに「反映的聴き方」や「I-メッセージ」を用いて子どものありのままを受け入れ,彼らが自らの問題を自律的に解決するように方向づける子育て支援法であるが,本研究から,勇気づけが教育実践においても適用可能であることが示唆された。
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