2001 Fiscal Year Annual Research Report
「顔が変わる」ことを望む外科矯正患者の身体表象および自己意識の検討
Project/Area Number |
13610147
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
梶原 和美 鹿児島大学, 歯学部, 講師 (40243860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 学而 鹿児島大学, 歯学部, 教授 (60005064)
永田 順子 鹿児島大学, 歯学部, 助手 (50264429)
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Keywords | 外科矯正 / 下顎前突症 / 顔 / 自己受容 / 心理社会的問題 / MMPI / 体験様式 |
Research Abstract |
本年度は外科的矯正治療を開始した顎変形症(下顎前突症)患者と顔貌に著しい不正のない一般学生を対象に、顔の受容の仕方,外見上の問題が日常生活体験とりわけ対人関係にもたらす心理社会的な障害の認知の仕方の特徴を,矯正歯科的な顎顔面形態の計測値,自己受容の仕方および心理テストで示されたパーソナリティ特性との関連から検討した。その結果,1)患者は一般学生に比して顔に対して強い不満を持っており,特に女性患者では顔の細部と外形へのこだわりを示す傾向がみられた。2)顔に対する悩みの強さとX線規格写真計測値による下顎前突の程度との間に相関は認められず,患者の顔に対する不満は顎顔面形態の不正の程度に必ずしも依存していないことが示された。3)顔と外見に関する心理社会的問題には,社会生活上における役割遂行上の障害すなわち「ハンディキャップ」と,顔に関する悩みを自己の内部に抱え込む「心理的とらわれ」の2つの側面があることが示された。なお患者は般学生に比べて「ハンディキャップ」を強く意識し,女性患者はさらに「心理的とらわれ」を強く意識する傾向が認められた。4)「ハンディキャップ」を強く感じる患者は,自己洞察・自己客観視」を除く全ての様式での自己受容が困難な状態にあった。5)MMPIの縮約版であるMINI-124において,患者のT得点の平均値は全ての尺度において標準範囲内にあったが,自己の顔の受容が困難で顔と外見に関する心理社会的問題を強く意識する患者のパーソナリティには,「自信がなく,社会的不適応感および不安・緊張が強く,社会的内向的」という特徴が認められた。なお患者の17%が明らかに何らかの臨床心理学的問題を呈していた。来年度は,患者の体験様式を投影法の心理テストを用いて更に深く検討するとともに,外科手術による変化のプロセスを追跡する。
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