2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610149
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
中野 茂 北海道医療大学, 心理科学部, 教授 (90183516)
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Keywords | 情動のしなやかさ / 遊び心 / 小学校入学 / 母子関係 / 遊戯的やりとり / 困難場面 / 乳児期 / 縦断研究 |
Research Abstract |
◎目的 本研究は、乳児期から縦断的に観察をしてきたケースを対象として、小学校入学という環境の変化への対処性の個人差から、「情動のしなやかさemotional suppleness」を育てる親子の遊戯的なやりとりの意義を明らかにしようとする。ここで、情動のしなやかさとは、困難な事態で他者と調和的でポジティヴな情動行動を示し、困難な事態を一つ「出来事」として楽しめる情緒性をいう。つまり、困難な事態での遊戯創発力ないし「遊び心」の発露として構想されている。この視点から本研究では、乳幼児期の母子の戯れ合いの個人差が遊び心を育てる環境の違いとして、小学校入学後の新しい環境への適応状態、つまりこの時点での情動のしなやかさといかに関連しているかを検討する。 ◎方法 <対象児>先行研究で生後半年から2歳まで縦断的に観察した子どもとその母親のうち、本研究でも協力を得られた11組。 <調査方法> 1.母親の情緒性:(1)家族の出来事、(2)育児の自己評価ついての聞き取り面接。 2.対象児の社会・情動的傾向:母親、幼稚園・小学校担任教諭の評定。 3.対象児の小学校での適応状態:通学の楽しさ、仲間関係について聞き取り面接。 4.対象児の情緒性の観察:(1)家族、(2)友達とのパズル場面。 ◎結果と考察 主な結果は以下である。(1)情動表出の一貫性:乳児期と小1時点での微笑・笑いの相対的頻度の個人差は11名中7名で母子ともに一貫していた。(2)乳児期に母子ともに微笑・笑いの相対頻度の高かった3名は、小1時点でのその場に適した情動の制御も高く、乳児期に母子ともに低かった4名は情動制御も低い傾向にあった。(3)しかし、小1時点でよく笑う子は、怒りの表出も高い傾向が認められた。したがって、情動表出の明示性に一貫した個人差があることと同時に、乳児期の母親の遊戯的な情動表出は、その後の子どもの情動制御に効果のあることが示唆される。
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