2002 Fiscal Year Annual Research Report
感情の社会・文化的構造-日常的感情経験の文化媒介プロセス-
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13610166
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
唐澤 真弓 東京女子大学, 現代文化学部, 助教授 (60255940)
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Keywords | 感情認識 / 関係志向性・独立志向性 / 文化的自己観 / 感情発達 / 日米比較 |
Research Abstract |
研究1:感情認識における関係志向・独立志向の発達的検討 感情の生起場面とその対処については、被験者の文化と場面の文化との交互作用がみられた。今年度は、これらの傾向が、小学生においてみられるかどうかを検討した。小学校五年生を対象に、感情場面の認識とその対処についての質問紙を実施する。場面は日米文化の子どもに自然な場面を設定する。また、対処行動については、日本的反応とアメリカ的反応共に、昨年度の大学生用質問項目と同様のものを使用した。この結果、日本では、関係ある他者の「気持ち」や「期待」を推察し、それに基づいて感情そのものをコントロールしようとする過程が小学生においても見出された。このことは、文化的自己観のよる視点での、日本では感情の生起そのものに関係志向的側面があることと一致する。 研究2:感情認識における関係志向・独立志向発達過程 昨年度の予備調査に基づき、幼児の感情認識の場面を、ビデオで日常的に追跡することにより、その発達過程をとらえた。(1)幼稚園の自然な感情生起場面で、いかに文化的自己観(関係志向性・独立志向性)が反映しているかを検討し、(2)それらが過去の研究において見られた文化特有の保育態度と関連しているかを見ることとする。アメリカ、日本、および中国の幼稚園における幼稚園でビデオを収録し、子どもの感情生起とその対処行動について、分析を行う。ここでは、中国を研究対象に加え、関係志向文化といわれているアジア文化の中での共通性と差異をみることによって、本研究の目的をより詳細に吟味した。その結果、日本の幼稚園での感情生起場面について、まず幼稚園・保育園教員および園長へのインタビューを行った。その結果、日本では関係性を維持する幼児教育プログラムが存在すること、さらにそれを良いことと評価する社会・組織体制があることが示された。これに対して、欧米の幼児教育の専門家に同じビデオについてインタビューしたところ、これらが関係性、信頼性を重視することを善いこととしないといった文化的スクリプトの差異を示した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 唐澤真弓, 柏木惠子: "感情対処の文化的要因-嫌悪場面に対する感情対処行動の日米比較研究"日本心理学会第66回大会発表論文集. (2002)
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[Publications] 唐澤真弓, 柏木惠子: "日常的感情場面における対処の文化心理学的検討-感情経験インタビューによる比較研究-"日本教育心理学会第44回大会ポスター発表. (2002)
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[Publications] Kitayama, S., Karasawa, M., Mesquita, B.: "Collective and personal processes in regulating emotions : Emotion and self in Japan and the U.S. In P. Philippot and R. S. Feldman (Eds), The regulation of emotion"Hilsdale, New Jersey : Lawrence Erlbaum (印刷中).