2001 Fiscal Year Annual Research Report
日本的文化が社会的認知に及ぼす効果の検討-個人主義・集団集義を超えた第3の視点-
Project/Area Number |
13610180
|
Research Institution | Sano college |
Principal Investigator |
伊坂 裕子 佐野国際情報短期大学, 社会福祉学科, 教授 (90222918)
|
Keywords | 個人主義 / 集団主義 / プライミング |
Research Abstract |
個人主義・集団主義に関連する観点で文化的影響をとらえる場合、日本は集団主義文化(相互協調的自己)をもつと考えられてきた。一方で、日本人は集団主義的ではないことを示す研究もある。垂直的・水平的個人主義、垂直的・水平的集団主義の4次元から構成されているTriandisらのINDCOL Scaleと52の価値を測定する価値尺度を531名の日本人大学生に実施した。その結果の因子分祈から、INDCOL Scaleで想定されている4次元に加えて、5番目の因子が出現し、「協調と競争を通した自己利益の維持」と名づけた。この新たな因子の特徴を明確にするため、それぞれの因子に対応するパーソナリティを61名の日本人大学生に判断させた。5つの因子それぞれに含まれる項目を4〜5項目選択し、それらの行動をする人物のパーソナリティを35のパーソナリティ特性で評定させた。その結果、水平的集団主義と垂直的集団主義は同様のパターンを示し、水平的個人主義と垂直的個人主義も同様のパターンを示した。それに対して、新たに抽出した因子はユニークなパターンを示した。この因子は情緒的不安定性、自己中心性、低知性、不親切さと関連していた。伝統的な集団主義の概念では、個人より集団を優先するという考え方であるが、新たな因子は個人を優先するが、個人が明確に集団と区別された存在ではなく、集団と個人の境界があいまいな中で、集団より個人を優先する形を示唆している。個人を優先するという意味では個人主義的であるが、集団と個人の境界があいまいな点はきわめて集団主義的である。このような、あらたな個人主義・集団主義のあり方をさらに明確にし、日本的な文化の特徴を14年度以降、探索したい。また、個人と集団の概念を活性化させるプライミングをChiuらの方法で追試したが、プライミングの影響を見ることができなかった。個人主義・集団主義の概念化が異なることも一因と思われる。今後、さらに検証したい。
|