2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本的文化が社会的認知に及ぼす効果の検討-個人主義・集団主義を超えた第3の視点-
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13610180
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Research Institution | College of International Relations, Nihon University |
Principal Investigator |
伊坂 裕子 日本大学, 国際関係学部, 助教授 (90222918)
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Keywords | 水平的個人主義 / 垂直的個人主義 / 水平的集団主義 / 垂直的集団主義 / 協調と競争 / ことわざ / 日本人大学生の価値観 / 相互協調的自己観 |
Research Abstract |
さまざまな文化は、個人を優先するか集団を優先するかという違いにより、個人を優先し競争が強調される個人主義と集団を優先し協調が強調される集団主義とが考えられてきた。しかし、日本人大学生の研究から「協調と競争を通した自己利益の維持」という第3の視点が示唆された。本年度は、INDCOL(日本語訳、中江間ら、1997)に、新たに作成した5項目を追加した38項目の質問紙を2群の大学生に実施した。その結果、2群ともに従来の「垂直的個人主義」・「水平的個人主義」・「垂直的集団主義」・「水平的集団主義」の4因子に加えて、「協調と競争を通した自己利益の維持」という因子を得ることができた。日本人大学生の価値観においては、個人主義・集団主義に加えた第3の視点「協調と競争を通した自己利益の維持」という構造が確認されたといえる。 さらに、「協調と競争を通した自己利益の維持」の因子と基本的性格や認知傾向との関連を探求するため、他の質問紙との相関分析を行った。その結果、「協調と競争を通した自己利益の維持」の価値観が高い人は、公的自己意識が高く、相互協調的自己観、特に評価懸念が強く、あいまいさを嫌いその場に応じた外的基準を作ることを好む(認知構造化欲求が高い)傾向があり、その一方で自分の作成した評価軸についてはあれこれ悩む(認知構造化能力が低い)傾向があることが示唆された。従来いわれていた集団主義や個人主義とは異なった心理的特徴を示している。 また、昨年度分類したことわざのうち36のことわざにどの程度賛成するかの評定に基づいて因子分析を行ったところ、「自他の区別(水平的個人主義)」、「協調と競争を通した自己利益の維持」、「親子関係(垂直的集団主義)」、「自己利益の追求(垂直的個人主義)」、「他者への配慮(水平低集団主義)」の5因子が得られ、ことわざの観点からも同様の因子構造を得ることができることを確認した。
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