2003 Fiscal Year Annual Research Report
文化のダイナミズム:日本における社会運動文化の歴史的比較研究
Project/Area Number |
13610187
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
野宮 大志郎 上智大学, 外国語学部, 教授 (20256085)
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Keywords | 文化 / 社会運動 / 日本近世近代史 / 比較 / 歴史 |
Research Abstract |
平成15年度の研究実績は、以下の2点である。 1、理論的考察と実証研究の融合 研究の最終年でもあり、これまで研究の統合的な作業を行った。これまでに蓄積した理論的考察を江戸時代終盤における農民運動をとおして実証する研究を進めた。史資料を通して確認するポイントは、それまで被支配的立場におかれている階層の農民が、どこに抵抗の正当性を求めたかである。正当性を担保するものとして「抵抗の文化」を想定し、その文化の由来を探ることで一つの解答を見出す試みを行った。史資料を通して見た結果、近世後期に何度も起こる下伊那の農民運動は、被支配階級の正義を代弁するものとして「義民」の考え方が、その背後にある生活苦という構造的特質に支えられて、農民の生存自体が危ぶまれるほどの困窮期に表面化すること、義民という概念が共同性意識の中心として存在すること、さらに、そのような「義民」文化は、田舎芝居・人形浄瑠璃などを媒体とし、近江や江戸表から運ばれてきたことがわかった。それゆえ、佐倉宗吾の義民伝説は、実際に佐倉に訪れたことがなくとも、農民のあるべき姿として彼らの日常の一部になっていたことも理解できた。 2、調査活動・資料収集・資料整理 引き続き、長野県飯田市と下伊那地方を中心に資料収集を重ねた。郷土史家・寺社の住職などへのインタビューと博物館・歴史館などへの訪問、寺社や家屋など歴史的建造物調査を継続した。過去三年間に収集した史資料データ約800点の整理が現在進行中である。この作業は今後も継続しておこなう予定である。
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