2002 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカにおける医師-患者関係にかんする実態調査研究
Project/Area Number |
13610190
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高城 和義 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00085953)
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Keywords | アメリカ医療 / 医療思想革命 / インフォームド・コンセント / 医師-患者関係 |
Research Abstract |
1970年代のアメリカにおいて、古代ギリシャ以来続いてきた医療思想に、革命的変化が起こった。医師の専権体制とパターナリズムとが疑問視され、ともすれば医師の操作の客体とみなされてきた患者の、「自己決定権」が主張されるにいたったからである。こうして、インフォームド・コンセントを基礎とする医師と患者との「共同意思決定」が、徐々に制度化されていった。本研究は、この「医療思想革命」の結果、どのような医師-患者関係が構築されてきたか、それが21世紀に入って、どのような発展をとげようとしているのか、その実態を調査しようとするものであった。 そのため本年度は、収集した文献資料を分析するとともに、ニューヨークの「子ども病院」とコロンビア大学医学部ならびに付属病院をフィールドとして、実態調査をおこなった。その結果、(1)アメリカの病院には、バイオエシストや医療社会学者、医療ソーシャル・ワーカー、心理学者などの、医師以外の専門家がそれぞれ役割を果たしていること、(2)カルテが原則として開示されていること、(3)入院病棟の管理は、看護師にゆだねられていること、(4)インフォームド・コンセントが制度化されていること、(5)子どもや精神障害者にも、インフォームド・コンセントが不可欠とされていること、(6)そのために、ヴィデオや写真・絵のパネルを用いてていねいにわかりやすく説明していること、(7)そのためのマニュアルが作られていることなど、総じて「医療思想革命」の洗礼をうけ、それまでの医師-患者関係とは大きく変化し、医師の専権体制が終わりをつげていることを確認することができた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 高城和義: "二一世紀におけるアメリカン・デモクラシーをめぐる諸問題"社会学研究. 70号. 51-73 (2002)
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[Publications] 高城和義: "パーソンズのマルクス・ウェーバー理解"社会学年報. 31号. 5-25 (2002)
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[Publications] 高城和義: "パーソンズ 医療社会学の構想"岩波書店. 251 (2002)