2001 Fiscal Year Annual Research Report
情報ネットワーク社会における社会規範の形成に関する社会学的研究
Project/Area Number |
13610201
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 純 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (40240816)
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Keywords | 情報ネットワーク社会 / 社会規範 / 情報民主主義 / 公共圏 / インターネット |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代の情報ネットワーク社会における社会規範の形成の状況について正確な現状認識をおこない、その認識を踏まえた上で、新たな社会規範の形成の方向性についての政策理念を構築することである。 この課題にあたって第一に手がかりとなるのは、情報公開、個人情報の保護、表現の自由などを基本的構成要素とする「情報民主主義」の理念であり、この理念が具体的に実現される社会空間としての公共圏(公開性・平等性・自律性に基づく、自由なコミュニケーションによる合意形成の場)の構築である。公共圏が、これまでの情報ネットワーク社会の展開の中でどのように、またどの程度構築されてきたかを文献調査・経験的調査などの方法を通じて理論的に考察した。 公共圏は、全体社会の中で次のような機能を果たす場として位置づけられる。すなわち、公共圏でのコミュニケーションによって、親密圏(私的生活圏)の中から様々な社会的問題が発見・再定義され、さらにそれに対する何らかの解決策が、政治システム、経済システム、あるいは親密圏に対して提示される。従って公共圏は、こうした問題発見・解決の役割を果たすためには、政治システム・経済システム・親密圏の三つの社会領域に対して自律性をもたなければならない。現代社会における情報ネットワークの意義は、まさにこの公共圏の自律性をサポートし促進することができるという点にある。こうした意味で現代の公共圏が問題解決の役割を果たしているケースとしては、日本の災害救援ネットワーキングや環境保護運動、内外の多くのオープンソースソフトウェアのプロジェクト、そしてインターネットを利用したセルフヘルプグループ(育児、介護など、従来は「私的」とされてきた問題について、情報や意見の交換を通じて問題への認識を深め、また外に向かって問題を提起していく集団)などのケースを検討した。
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Research Products
(1 results)