2001 Fiscal Year Annual Research Report
記憶と文化-「赤穂事件」記憶への文化社会学的アプローチ-
Project/Area Number |
13610203
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
大野 道邦 奈良女子大学, 文学部, 教授 (20067862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 伸彦 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (10242992)
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Keywords | 赤穂事件 / 忠臣蔵 / 歌舞伎 / 記憶 / 文化 / 文化社会学 / 歴史の芸能化 / 神格化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、記憶と文化の関係について18世紀初頭の「赤穂事件」を手掛かりに分析し「文化社会学」の理論的・経験的な可能性を追及するものである。この場合、(1)記憶は既存の文化的な「枠」に準拠して「再生=再構成」される、(2)記憶は集団のアイデンティティ形成の焦点となり、新たな「文化」として「生成」する、という仮設を設けた。研究の結果、次の知見等が得られた。 1、文化論、記憶論関係の著書・論文を検討し記憶と文化の関係の諸類型を確認した。2、演劇博物館所蔵の『忠臣蔵』関係の著書・英訳書等を調査し、赤穂事件記憶の演劇文化や国民文化としての成立過程の一側面について知見を得た。3、 『忠臣蔵』初演(1748年)から1989年までの歌舞伎上演記録を統計的に処理し、とくに、明治30〜40年代(1897〜1907)の上演数が突出していたとの知見を得た。これが日本の文化的な近代化と関連しているかどうか引き続き研究してゆきたい。4、赤穂事件記憶の再構成において江戸期の「サムライ名誉文化」がどの程度「枠」として機能したのかについて、武士ないし武士道に関する諸文献を検討し一定程度の理論的な知見を得た。5、平成13年12月14日兵庫県赤穂市において挙行された「赤穂義士祭」を観察し現況を確認した。また、義士祭・義士会関係の資料を収集し義士祭の歴史や担い手について知見を得た。6、愛知県幡豆郡吉良町において吉良上野介義央関係の史跡・事績・伝承等を取材し、赤穂事件記憶への「対抗記憶」が形成されてきたことを確認した。7、泉岳寺(東京)、大石神社(赤穂、京都山科)、吉良邸後(東京)を調査観察し、赤穂事件記憶の「局在化(localization)」の一端を明らかにした。8、「忠臣蔵サミット」関係の冊子を赤穂市などの自治体から収集し、赤穂事件記憶の政治行政的・文化的な資源=資本化の動態について一定の知見を得た。9、「中央義士会」や「全国義士会連合会」についての情報収集を行い赤穂事件記憶の担い手組織の一端を明らかにした。
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