2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代化にともなう葬送儀礼の変化に関する国際比較研究
Project/Area Number |
13610229
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
嶋根 克己 専修大学, 文学部, 教授 (20235633)
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Keywords | 社会学 / 比較文化論 / 葬送儀礼 / アメリカ:フランス:日本:モンゴル / 風葬 / ラマ教 / 葬祭業 |
Research Abstract |
当該研究の目的を遂行するために、昨年度までの北米調査、フランス調査につづいて今年度はアジア地域からモンゴルを調査対象地に選び実施した。 遊牧民族を主体とするモンゴルは風葬(天葬、鳥獣葬)が代表的な葬法と考えられているが、人口の3〜4割が集住するウランバートル市内ではもはや風葬は実施されていない。つまり遊牧的生活者と都市生活者では、葬送儀礼のプロセスは類似しているが、遺体処理の方法は大きく変化してきている。 モンゴルはソ連の影響下にあった時期が長く、また衛生上の視点からも都市生活者の葬儀は土葬で行われている。しかし都市の拡大は墓地を生活圏内に含みこむことになり、特にゲル(モンゴル式移動住宅)生活者たちの健康への影響が心配されている。政府部内には火葬への提言はあるものの、現実的には火葬場の建設には至っていない。生活習慣や信仰、環境問題もあり今後速やかに葬法が変化するかどうかは予測を許さない。 モンゴル社会では血縁関係が強く、葬儀の実施もほとんどが血縁関係者の手によってなされている。したがって先進国のように葬儀業が独立したサービス産業として自立していない。石材加工、棺製造などがかろうじて存在するのみである。 アメリカ合衆国、フランス、日本、モンゴルの葬儀を比較することによって、当該国の産業構造、衛生政策、社会関係、宗教的信仰の強度と質などさまざまな社会的要因が、葬儀という社会的事実を決定していることが理解される。次年度以降、これまでの調査地域での補充的な調査を実施するとともに、調査地点を増やして上記の仮説を裏付けていくことにしたい。
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Research Products
(1 results)