2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610236
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
堀川 三郎 法政大学, 社会学部, 助教授 (00272287)
|
Keywords | 都市再開発 / 保存運動 / 主体形成 / 都市計画 / 土地利用 / 住民運動 / 町並み保存 / 環境社会学 |
Research Abstract |
本年度は(1)景観を保存しようとする人々,(2)変化を促進しようとする人々,(3)両者のせめぎ合いの結果としてもたらされる景観,の3つの位相についてフィールドワークを行なった。第1と第3の位相の解明に過半の時間を費やしたが,僅かながら,第2との関連で第3の位相をも実査した。 (1)「景観を保存しようとする人々」の解明 質的調査により,景観保存運動を担った主体を,それぞれの主観的意味世界を含めて描き出すことが可能となった。運動内部が一枚岩ではなく,様々な社会的集団・層を水源とする,異なる3つの水脈の合成体であることが明らかになってきた。2本の論文で成果を発表済である。 (2)「変化を促進しようとする人々」の解明 質的調査により,変化を推進しようとしてきた主体の析出と,その論理を解明した。「行政の一貫性」と「公共事業の波及効果」という論理,一貫した観光開発政策のないところで,既成事実としての開発圧力に引きずられた開発の実態が,定点観測の結果とともに明らかになった。 (3)結果としての景観:土地利用の歴史的変遷の遡行調査から 1997年から継続している運河港湾地区及び中心市街地における景観変化調査を引き続き実施する一方で,2002年度から土地利用の歴史的変遷を辿る文書調査を実施してきている。運河港湾地区内で土産物店舖化の著しい土地8筆を取り上げ,閉鎖登記簿などの史料を閲覧し,明治年間からの土地利用,土地所有者,分筆の有無などを精査した。変化の主体が個人ではなく企業中心であること,次第に小樽以外の資本が参入する様子が確認されること,分筆の度合いが低いことなどが,明らかになってきた。 こうした成果から,歴史的な景観を保存しようとする運動の論理が,単なる懐古趣味ではなく,むしろ現代日本における開発促進型ともいうべき都市計画制度の問題点を鋭く照射していることが明らかになったと考えられる。
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] 藤田弘夫, 浦野正樹編, 堀川三郎, 他著: "都市社会とリスク-豊かな生活を求めて(「社会学のアクチュアリティ」シリーズ第8巻)(堀川は第8章を執筆)"東信堂(予定). 350 (2004)