2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610252
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
片桐 新自 関西大学, 社会学部, 教授 (20161060)
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Keywords | 歴史的環境 / ボランティア・ガイド |
Research Abstract |
本年度は、4年間の研究期間の3年目に当たる。本年度は、前年度に見いだした重要なテーマである「歴史的環境保全におけるボランティアの役割」に注目しながら、各地での観察・聞き取り調査を進めた。その結果、このテーマを考える上で、「地域の歴史を語る人々」という枠の広げ方が必要であることが明らかになった。ボランティア・ガイドに代表されるような典型的なボランティアではないような形で歴史的環境保全に対して重要な役割を果たしている人々が数多くおり、彼らの役割に注目しなければ、ボランティア・ガイドの役割も正確に把握できない。たとえば、郷土史家、役所の関連部門の担当者、博物館・資料館の職員、さらにはその地域の人間ではなくとも、その地域について研究している専門家などは、地域の歴史について多くの知識を持っており、彼らはしばしばボランティア・ガイドの教育係にすらなる。また、地域で訪問者と接する商売(ホテル、飲食店、土産店、タクシー)をしている人々なども「地域の歴史を語る人々」として忘れてはならないだろう。わざわざボランティア・ガイドを頼んで案内してもらう訪問者はそれほど多くはないが、こうした商売をしている人々とは必ず接触するし、気楽に地域のことを尋ねたりする。それゆえ、ある意味では、ボランティア・ガイドより、彼らの方が、地域の歴史を広める上で、重要な役割を果たしているということもできる。地域によっては行われているところもあるが、こうした訪問者と接する可能性の高い人々に、地域の歴史をしっかり知ってもらう勉強会なども重要視されるように存つてくるだろう。以上のような認識を歴史的環境保全に取り組む各地へ出かけ観察する中から見いだしたのが、本年度の大きな研究成果である。
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