2003 Fiscal Year Annual Research Report
〈旅〉と〈住〉の間-移住・地域選択をめぐる愛着と動機の言説の相互作用論的分析
Project/Area Number |
13610254
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
菅 康弘 甲南大学, 文学部, 教授 (40226410)
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Keywords | Iターン / 移住 / 脱都市 / ストレンジャー / 旅 / 観光 / 地域選択 / 愛着 |
Research Abstract |
本年度は、サーバー機の不調やシステムの入れ替えなどで遅れていた、移住者データベース作成が中心であった。『田舎暮らしの本』(宝島社)など総合的な田舎暮らし関連雑誌から得た移住者の基本的属性の入力は初年度から継続しているが、本年度はさらに、一昨年北海道の移住者より紹介があり何度か聞き取り調査を実施した沖縄への移住世帯のデータを充実させるべく、琉球関連の雑誌を揃え、新たに入力対象とした。 このため本年度はデータベース作成のための謝金が膨れあがったが、それでも、私費・学内研究費を使用し沖縄本島に聴取調査に赴いた。訪問先は北海道と同様「とほ」宿を経営する2世帯と東京から移住した和紙職人である。合わせて、これまで情報が乏しかった沖縄本島北部の移住に関する基礎的な情報収集を行った。 昨年度は沖縄と北海道という<周縁>性を共有する土地において、地域選択と愛着、そして定住意識においてかなりの部分共通するものがあると結論づけたが、3年度に渡る聴取りを通して得られた点は、両地域の「愛着の形」が微妙に異なるものであることも判明した。 詳細は報告書(冊子)に譲るが、一つの仮説として、地域選択から愛着へというプ過程に関与する'stranger-native interaction'における異なりと同等性というウェイトの相違がある。すなわち、通常「よそ者扱い」というとき、違う人間として扱われるか、下の扱いをされるかという2点が不分明なまま往々語られるが、前者の場合よりも後者の扱いの時の方が人は愛着を感じにくい。逆に前者の場合「愛着の形」は<旅>のモチーフを含んだ独特のものになり、ここから2つの周縁地域の相違が生じると考えられるのである。 このように今日の地域でも異人性は諸々の様相を呈する。本年度は上記の仮説の下で報告書をまとめ、11月に行われる第77回日本社会学会において一般報告を行う予定である。
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