2003 Fiscal Year Annual Research Report
途上国へ適用可能な自治体レベルの環境政策モデルの事例研究
Project/Area Number |
13610257
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
平岡 義和 奈良大学, 社会学部, 教授 (40181143)
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Keywords | 水俣病 / 危険性の過小評価 / 正当化の論理 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、北九州市と水俣市について、その環境政策に関する文献・資料を収集した。また、水俣市については、主として漁業関係者、鮮魚商、飲食店など、魚の採取、販売などに関わる人々に対して、熊本水俣病事件の初期段階(1956〜59年)において、漁業規制、魚の販売、摂食などがいかに行われたかという点を中心に、聞き取り調査を実施した。 この調査によって、以下のような知見が得られた。 (1)漁民をはじめ、魚を扱っている人々の多くが、魚介類の危険性を過小評価していたこと。 (2)その際、もっともよく聞かれた過小評価の論理は、「あぶないのは弱った魚だけ」というものであったこと。 (3)そのこともあって、自らの魚を見る目を信じて、魚介類の摂食を控えたりするような行動は、ほとんど取られていないこと。 (4)同様の論理で、たとえ水俣病類似の症状を示していたとしても、自身や周囲の人々は水俣病と関係ないと考えている場合が多く、劇症型の患者とそうでない患者とを、また劇症型が多発した袋地区とそれ以外の地域とを区別し、水俣病を前者に限定するような認識を有していること。 (5)彼らの記憶からすると、行政が、漁業規制、摂食規制に関して、イニシアティブをとった形跡はほとんど見られないこと。 今年度は、このようた漁業関係者などの認識、行動に限定した聞き取りしか行えなかったが、これと行政関係者の聞き取りとをつき合わせ、行政の対応にどのような問題があったのか、またそれはどのような要因によるのか、より適切な対応を行うには何が必要なのか、考察していくことを、来年度の課題としたい。
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