2001 Fiscal Year Annual Research Report
教育哲学的意味における〈子ども〉〈大人〉とその現代的諸相の研究
Project/Area Number |
13610306
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土戸 敏彦 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (30113096)
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Keywords | 子ども / 教育哲学 / 差延 / 共生 / 他者 |
Research Abstract |
教育哲学的な意味における<子ども>とは、年齢などで決まる現実の子どもでもなく、またあるべき姿という意味での子ども規範でもなく、いわば大人の中にも存在する<子ども>性を意味する。<大人>についても同様である。従来断片的にしか言及されなかったこの<子ども><大人>概念に焦点を当て、これによって今日の教育諸現象を究明しようとすることを、本研究はもくろんでいる。 まずは、論文「差延(differance)の効果としての子ども・大人概念の分化」において、この<子ども><大人>概念の性格を確定すべく、その発生をジャック・デリダの「差延」という考え方に依拠して記号論的に明らかにしようと試みた。三つの相(現実の子ども、規範としての「子ども」、および<子ども>性)のうち<子ども>概念は一見根源的に見えるが、実はこの<子ども>も他の二つの相と同様、現前することなく、差延の運動のなかで(現前するかのように)湧出してくるものである。<子ども><大人>を実体化しないことの重要性を確認しえたことが、本論文を通しての最大の成果であった。 次に、「<他者>との出会いとしての共生--教育にとっての示唆」であるが、これは教育哲学会第44回大会シンポジウム「共生社会における子どもと教育」(2001.10.13.)における報告提案である。この報告において「共生」という問題をその原理から再考し、そのキーワードとして<他者>を摘出したのであるが、教育という人間活動にとって<他者>とはほかならぬ上述の<子ども>であるという問題提起を行なった。教育が自分自身にとっての<他者>すなわち<子ども>との「共生」という視点をもちうるとすれば、それは、教育が「同化」の作用を本性とするという限界とその作用をあくまで貫徹せざるをえないという宿命を認識し、自覚するかぎりにおいてである、というのがその骨子である。
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Research Products
(2 results)