2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610315
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
朱 全安 千葉商科大学, 政策情報学部, 助教授 (20266183)
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Keywords | 江戸時代 / 外国語教育 |
Research Abstract |
本年度の研究によって、近世日本における中国語を中心とする外国語教育の受容・教授に関係する数々の資料が収集されるとともに、近世、とりわけ鎖国期の日本における中国語の受容および教育の実態に関して以下の基礎的な史実が判明した。 漢学者による中国語教育に関しては、従来とかく荻生徂徠の学派による中国語学習が強調されがちであったが、幕藩政治の実務に中国語を生かしたという意味においては、むしろ木下順庵及びその弟子たちが中国語を重視し、それを実際に応用したところに注目すべきである。木下順庵は儒学者、教育者として名が高く、その門下から数多くの優秀な儒学者を出した。彼の弟子には新井白石、室鳩巣、雨森芳洲、榊原篁洲、祇園南海、深見玄岱等の俊才がいるが、彼らはいずれも中国語を重視し、ある者は幕府政治の中枢で中国語の知識を実務に生かし、またある者はその中国語能力によって幕藩に仕官した。これは木下順庵が、儒学のみならず中国語に対して格別な関心をもち、弟子たちに中国語を学ぶよう勧めていた影響であった。 近世日本における中国語教育の中心であった長崎唐通事の世界では、江戸時代末期になって中国語教育から英語教育への転換が生じた。江戸時代末葉、長崎における中国との貿易量が減少するにつれて、中国貿易を管掌する長崎唐通事の仕事も減ってきた。そのような時流のもと、江戸時代の中国語教育を中心的に担ってきた唐通事の中から、英語を学んで英語通訳に転ずる者が出てきたのである。これは江戸時代における中国語教育と英語教育との交流という点で注目すべき事実である。
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Research Products
(1 results)