2004 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本における外国語教育史の基礎的研究-中国語教育を中心として-
Project/Area Number |
13610315
|
Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
朱 全安 千葉商科大学, 政策情報学部, 助教授 (20266183)
|
Keywords | 江戸時代 / 外国語教育 |
Research Abstract |
本年度の研究によって、近世日本における中国語を中心とする諸外国後の受容・教授に関係する数々の資料が収集されるとともに、近世日本における中国語の受容および教育の実態に関して以下の基礎的な史実が判明した。 漢字が日本へ伝来したのは、日本で日本語を表記する文字が案出される以前のことであった。そのため、漢字はまず日本語を表記する手段として重用され、その後、日本の支配者の間で漢文教育が行われるようになった。このことは、漢字を改めて中国語を記す文字として認識することを困難にし、漢文を中国語の文法に従って読み解くより、専ら日本語の流れに沿ってこれを理解する形(漢文訓読法)をとり、漢文は日本人にとって外国語文でありながら、これを完全に一個の外国語とする感覚が希薄とならざるをえなかった。 そのなか江戸中期に、伝統的な漢文訓読法による漢文教育を批判し、漢文教育に対する全く新たな見解である漢文直読論を提出した荻生徂徠が現れた。彼は、学問をなすものは漢文訓読法によってはならず、まず中国語の口語を学習すべきだ。そして、中国語の発音で読み、中国語の法則に従って日本語の口語に訳すという方法により漢籍を学べば、はじめて本当に中国人について見解することができるし、これを学問の最良の方法とした。ここで重要なのは、伝統的な漢文教育の内に潜む錯誤と独善主義を明らかにしたと同時に、漢文を日本語によって読むのではなく、中国語すなわち「外つ国」の言葉として読み、理解しようとしたことである。 荻生徂徠の漢文直読の主張は、後に秋山玉山により熊本藩の藩校時習館の学則「時習館学規」第六条として藩校教育の中で明確に規定され、提唱された。これにより、長い歴史をもつ伝統的な漢文訓読法による漢文教育が行われてきた中で、漢文直読法による漢文教育がはじめて、学校教育の中に取り入れられたのである。
|
Research Products
(1 results)