2001 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における教育学と大学に関する学説史研究-東京帝国大学教育学科に於けるアカデミズムの史的分析を中心として-
Project/Area Number |
13610317
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
榑松 かほる 桜美林大学, 資格・教職教育センター, 教授 (90112656)
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Keywords | 教育学説 / 東京帝国大学 / 教育学 / アカデミズム / 吉田熊次 |
Research Abstract |
研究初年度にあたる本年度は、これまでに蓄積してきた資料の整理と補填を中心に、研究を展開するに必要な資料・文献の収集と整理を行い、研究の基礎的作業を重点的に行った。具体的には主として次の作業を行った。 1.東京帝国大学教育学担当の5教官、吉田熊次、林博太郎、春山作樹、阿部重孝、入沢宗寿の足跡と研究活動の動向に関する調査を行った。各自の年譜を作成し、その足跡を辿ってみると、必ずしも象牙の塔に閉じこもった「講壇教育学者」であった訳ではなかったことが明らかになった。様々な講習会の講師や研究組織の役員などを通じて、教育界に対しても、直接的な影響力を持っていたことも判明してきた。調査は次年度も継続して行う。 2.明治後期から、5講座拡張までの間の教育学説の諸相、傾向に関する調査を雑誌記事を使って行った。明治後期、すなわち、吉田熊次が専任として着任以降から、講座拡張までの間の教育学の研究動向を調査した。海外教育学説が、誰によってどのようなメディアを通じて紹介されたのか、その内容はどのようなものであったのか、等々を調査した。明治40年代頃、日本の教育学研究の自立化が見られる。これらの教育学研究の広がりや問題認識が、講座拡張にどうつながるのかまでは明らかに出来なかったが、次年度以降の調査により、さらに検討してみたい。 3.教育学科の研究、教育活動に関する調査を、各学年ごとの大学便覧を中心にして行った。各教官の担当科目や各教官による演習題目の整理は終了できた。また、各教官の教育活動がどのような学問的広がりをもったかを調査するため、学生の卒業論文のテーマとその内容に関する研究を進めた。教官の学問的関心と卒論のテーマの関連性は、部分的には認められたが、必ずしもそれに影響されていない場合もあった。本年度内の調査に限って言えば、学科の教育は次世代の研究者養成の機能を持っていたと言える。
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