2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本語を母国語としない親とその子どもに対する就学前教育施設の保育者の対応の検討
Project/Area Number |
13610329
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Research Institution | SEIWA COLLEGE |
Principal Investigator |
日浦 直美 聖和大学, 教育学部, 教授 (80181056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 都 関西外国語大学, 短期大学部, 助教授 (20330219)
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Keywords | 保育 / 就学前教育 / 多文化 / 外国籍 / 保護者 / 子育て / 幼稚園 / 保育所 |
Research Abstract |
本研究は、1)日本語を母国語としない保護者やその子どもと保育者とのかかわりの実状を把握、検討し、就学前教育・保育施設の課題を明確にすることと、2)1)の結果を踏まえて、日本語を母国語としない親子に対する対応のガイドラインを見出すことを目的とした。 1)の目的に関しては13年度に大阪府と兵庫県の幼稚園および保育所の保育者の日本語を母国語としない親子への対応に関する自由記述式回答894の分析を行い、その特徴や傾向をまとめたが、本年度はその結果に基づき、保育者が対応上「困っていること」として挙げている(1)言語に関することと(2)異文化理解に関することについて、それぞれ詳細な考察を加え、保育者の対応上の留意点を整理した。 言話に関しては、子ども、保育者、保護者の3側面から分析し、言語獲得期にある子どもの特徴や保育者が子どもや保護者と関わる上で、心配したり、困ったりしていることとその対応、日本で子どもを育てる際の言葉に関連した親子関係の課題などについて考察した。言語とアイデンティティ形成との関係を考え、保育者は子どもの生涯を見据えて、母国語の維持、保障をいう観念を持つことが重要である。 異文化理解については、特に保育者が子育て文化の違いを感じる要因、すなわち(1)食事(味付け、マナー、離乳、弁当)、(2)しつけ(いじめと喧嘩の解釈、子どもへのかかわり方、生活リズム、トイレット・トレーニング)(3)衣服(厚着、装身具)(4)健康(病気への対処、園で負った傷や怪我に対する感情)、(5)その他の生活習慣(園行事、園での規則やルール)(6)宗教について、子育ての方法や価値観の違いをどのように受け止め、対応したらよいかということを考察した。今後の保育者の課題として(1)子どもの発達に関する基本的理解、(2)異文化の子育てや習慣についての知識、(3)自文化中心主義からの脱却の難しさを認識していることが求められる。 2)の目的に関しては、多文化社会の先進国であるスウェーデンとイギリスの教育・保育について、文献研究を行い、そこから得た知見を基にわが国の教育・保育の課題について考察した。また、保育者のためのガイドラインを明確にする第1歩として、米国の就学前教育・保育関係者のためのガイドブック(Gonzalez-Mena,J. Multicultural Issues in Child Care, Mayfield Publishing Company, 2001)の翻訳を行った(平成16年春出版予定)。
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Research Products
(1 results)