2002 Fiscal Year Annual Research Report
18-9世紀日本農村における子宝意識と子育て文化の地域間比較研究
Project/Area Number |
13610337
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Research Institution | Shohoku College |
Principal Investigator |
太田 素子 湘北短期大学, 幼児教育科, 教授 (80299867)
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Keywords | 子宝意識 / 生育儀礼 / 間引き / 捨子 / 近世日記 / 宗門改帳 / 子育て / 出生コントロール |
Research Abstract |
四年計画の第二年目にあたる今年は,対象とする三つの地域それぞれについて具体的な作業を平行して進めた。 まず、東総地方については、宮負定雄の採集した民間伝承の分析を原稿化した。江戸近郊に生きた農民文化人宮負定雄が採集した話は、古来の再生信仰や脆い単婚小家族の実態、子育て責任意識の民衆への浸透の状態と、子捨ての悲しみなどを写し出している。 播州竜野藩新在家村富永家の日記『高閑堂日記』については、この温暖な播州平野の子育て意識について第一次の草稿をまとめた。しかし、この地方の地方文書、人口史料との本格的な比較検討はこれからで、史料は豊富に集めつつあるので、次年度はその整理と比較分析の年になる。この地域について、今年度進めた主な作業は、日飼村宗門人別改帳・宗門証文合計40点の撮影保存、黍田村宗門人別改帳93点のBDSの作成であった。 会津地方については、この地方の子育て意識を映し出す近世後期の日記を発掘して、前期の日記『角田藤左衛門日記』と比較することが大きな課題であった。今年度、高田町の寺子屋継声館を主催した田中重好の日記の一部を撮影保存した。また、幕末維新期に藩校日新館に学び教員、公務員としてこの地方に生きた佐藤文吾の日記を複写した。この分析も次年度以降の課題である。養育料支給願いや祝儀簿などの子どもに関する史料も新たに加えている。 西の村と東の村の比較、都市近郊農村と地方農村について現在は差異というより共通する近世的な親子関係や子育て意識の特質に興味が引かれる。例えば二男一女を得て安堵する心境、娘の嫁入りを記す筆致、痘瘡をやり過ごす習俗、乳幼児死亡の多さなど等、播州の近世後期の日記と奥会津の近世中期の日記に極めて共通する心境を認めることができる。しかし、本家分家関係や奉行人の実態等、子どもを取り巻く家族の関係性には異質な部分が日記の中に垣間見える。さらに、間引きや捨子という子どもの生命に関わる習俗には明確な対応の差異がありそうだ。今後も慎重に検討してゆきたい。
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Research Products
(1 results)